第109回 看護師国家試験 午前 問98 解説
📝 問題
急性胆囊炎で入院中の A さん(81歳、男性)。入院後2日、妻が A さんについて「入院してからよく寝ています。時々ここが病院だとわからないようです。話しかけても気づかず、天井を眺めていることもあるし、しゃべり続けることもあります」と看護師に訴えた。A さんのバイタルサインは、体温36.9 ℃、呼吸数20/分、脈拍88/分、血圧144/80 mmHg。 A さんの状態で最も考えられるのはどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ 入院後の見当識障害・傾眠と覚醒の変動はせん妄が最も考えられる。
せん妄は身体疾患・入院・環境変化などを誘因として急性に発症する意識障害で、注意・意識レベルの変動、見当識障害、睡眠覚醒リズムの障害を特徴とする。
Aさんは入院後、よく寝ている一方で場所がわからず、話しかけても気づかないかと思えばしゃべり続けている。 症状が1日のなかで変動しており、急性胆囊炎という身体疾患と入院という環境変化が誘因になっている。高齢であることもリスクである。 せん妄が最も考えられる。
他の3つは、いずれも急に始まって変動する意識障害を説明できない。 うつ病は抑うつ気分が続く病気、ナルコレプシーは日中の強い眠気が主症状の睡眠障害、急性ストレス反応は強い体験のあとの不安・過覚醒が中心である。
見当識障害とは
今がいつか、ここがどこか、目の前の人が誰かが分からなくなること。せん妄や認知症でみられる。
- 1
うつ病不正解
うつ病は抑うつ気分が持続するもので、症状の急激な変動や見当識障害は主症状でない。
- 2
せん妄正解
急性発症の見当識障害と睡眠覚醒の変動は、身体疾患・入院を誘因とするせん妄の典型像。
- 3
ナルコレプシー不正解
ナルコレプシーは日中の強い眠気が主症状で、見当識障害や意識の変動は伴わない。
- 4
急性ストレス反応不正解
急性ストレス反応は不安・過覚醒が中心で、意識変動を伴う見当識障害は典型的でない。
📚 混同しやすいので注意
せん妄は「急に」「変動する」「意識が濁る」の3つがそろうのが特徴。 認知症と違い原因を取り除けば改善しうるため、まず身体的な原因(感染・脱水・低酸素・薬剤)を探すことが看護の出発点になる。
- 要因は準備因子(高齢、認知症、脳血管障害)・直接因子(感染、脱水、電解質異常、低酸素、手術、薬剤)・誘発因子(入院や環境変化、疼痛、不眠、身体拘束、明るさや騒音)に分けて考える。
- せん妄を起こしやすい薬剤に抗コリン薬・ベンゾジアゼピン系睡眠薬・オピオイド・ステロイド・H2受容体拮抗薬がある。
- 低活動型せん妄(傾眠、無気力)はうつ病と間違われやすく見逃されやすい。
- ケアは環境調整が中心。時計・カレンダーを見える位置に置く、昼は明るく夜は暗くする、眼鏡・補聴器を使う、早期離床、なじみの物を置く。
| せん妄 | 認知症 | |
|---|---|---|
| 発症 | 急性(数時間〜数日) | 緩徐(数か月〜年) |
| 経過 | 日内変動が大きく、夕方から夜間に悪化 | ゆるやかに進行 |
| 意識 | 混濁し変動する | 清明(進行期を除く) |
| 注意 | 障害される | 初期は保たれる |
| 可逆性 | 原因の除去で改善しうる | 基本的に不可逆 |
出典:「第109回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について