第103回 看護師国家試験 午前 問102 解説
📝 問題
次の文を読み100〜102の問いに答えよ。Aさん(85歳、男性)は、5年前に脳梗塞を発症し右片麻痺があり、要介護3の認定を受けた。Aさんの子どもは遠方に住んでおり、腰痛のあるAさんの妻(80歳)が1人で介護している。Aさんは、週2日通所介護を利用している。3年後、Aさんは誤嚥性肺炎で入退院を数回繰り返したことからADLが低下し、要介護5になった。そのため、Aさんの妻の腰痛が悪化し、Aさんは介護老人福祉施設に入所した。入所後1か月が経過し、Aさんは発熱、傾眠傾向が続いている。Aさんの妻は医師から死期が近いと説明を受け動揺した。Aさんの妻は「自宅で看取ることができず、夫に悪いと思っています」と施設の看護師に話した。 Aさんの妻への声かけで最も適切なのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 自宅で看取れないことを悔やむ妻には、これまでの介護をねぎらう言葉をかける。
Aさんの妻は、脳梗塞の発症から8年にわたって介護を続け、自分の腰痛が悪化したところで施設入所を選んだ。それでも「自宅で看取れない」ことを自分の落ち度と感じている。
この自責には、これまでの介護をそのまま認める言葉が届く。長く担ってきた事実をねぎらわれることで、妻は自分を責める気持ちから少し離れられる。 死が近いと知らされてから始まる悲しみを予期悲嘆といい、家族へのケアはここから始まる。
残る3つは、気を張らせたり、負担の大きい選択を勧めたり、看取りの場から遠ざけたりしている。
予期悲嘆とは
大切な人の死が近いと分かったときから、亡くなる前に始まる悲しみ。前もって気持ちの整理が進み、死別後の悲嘆をやわらげることがある。
- 1
「あなたがしっかりしましょう」不正解
動揺している家族に、さらに気を張るよう求めている。感情を抑えさせる言葉は自責を強める。
- 2
「自宅で看取るようにしましょう」不正解
腰痛が悪化して入所に至った経緯を踏まえていない。いまから在宅に戻すことは、妻の負担をさらに大きくする。
- 3
「長い間、十分介護をしてきましたよ」正解
8年にわたる介護を事実として認め、ねぎらっている。妻は自責がやわらぎ、残された時間を夫と過ごすことに向かえる。
- 4
「私たちが看取りますので大丈夫ですよ」不正解
安心させるようでいて、看取りを職員だけのものにしてしまう。家族が最期のときに関われるよう誘うほうがよい。
📚 ここも一緒におさえておこう
看取りの場面では、家族もケアの対象として問われる。「亡くなる前」と「亡くなった後」の両方に支援があると覚えよう。
- 「もっとできたのではないか」という自責の念は、看取りの場面でよく語られる。否定も肯定もせず、これまでの介護を具体的に認める
- 施設での看取りでも、面会やケアへの参加(清拭・口腔ケアなど)を通じて家族が一緒に過ごせるようにする
- 死別後の遺族への支援をグリーフケアという。看取りの支援はここまで含む
参考: 看取り期の家族への支援に関する標準的看護/介護老人福祉施設における看取り介護
出典:「第103回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について