第115回 看護師国家試験 午後 問91 解説
📝 問題
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。 Aさん(78歳、女性、要介護1)は夫(82歳、要支援1)と2人で暮らしている。高血圧症と心不全と診断され、降圧薬と利尿薬を内服し、日常生活では呼吸困難の症状はない。病状管理のために訪問看護を週1回利用している。Aさんは「最近、買い物に行くとすぐに疲れてしまい、重いものが買えない」と話し、訪問介護員の買い物への同行を希望した。Aさんの希望を受けてサービス担当者会議が開催され、訪問介護事業所から訪問看護師に「買い物に同行するときに注意することはありますか」と質問があった。 このときに訪問看護師が助言する内容で適切なのはどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ 息切れが出たら立ち止まって休むよう伝えるのが最も適切。
Aさんは高血圧症と心不全で降圧薬・利尿薬を内服している。安静時に呼吸困難はないが、「買い物に行くとすぐ疲れてしまう」というのは労作時の息切れであり、心臓が活動量に見合った拍出を保てなくなっているサインである。 訪問介護員に伝えるべきなのは、息切れが出たら立ち止まって休むという、その場で誰でも判断でき実行できる具体的な注意点である。
買い物同行は「代わりに買ってきてもらう」ための支援ではなく、Aさんが自分で選び自分で出かける生活を続けるための支援である。介護員には、Aさん自身のペースを守ること、重い荷物など負荷のかかる部分を分担することを、医療用語ではなく行動の言葉で伝える。
- 1
「外出時は水分制限をしてください」不正解
利尿薬を内服しており、外出時は発汗も加わって脱水・電解質異常を起こしやすい。水分制限は医師が心不全の状態をみて指示するものであり、看護師が一律に「外出時は制限を」と介護員へ助言するのは危険である。
- 2
「Aさんに息切れが出たら休憩してください」正解
労作時の息切れは心負荷が過大になったサインで、休憩により心拍数と酸素消費量が下がり回復する。介護員がその場で判断でき、Aさんの外出という希望も守れる、最も実際的な助言である。
- 3
「食品はAさんの好きなものを買ってください」不正解
心不全・高血圧症では1日6g未満の減塩が基本であり、加工食品・漬物・汁物などの選び方に配慮がいる。「好きなものを」とだけ伝えるのは病状管理の視点が抜けている。
- 4
「Aさんを車椅子に乗せて買い物に行ってください」不正解
Aさんは要介護1で歩行が可能である。必要のない車椅子の使用は下肢筋力の低下(廃用)を招き、「自分で買い物に行きたい」というAさんの主体性も奪ってしまう。
📚 一緒に確認しよう
心不全の増悪は、体重と自覚症状に前ぶれが出る。在宅では次のサインを本人・家族・介護員が共有しておく。
- 3日で2kg以上の体重増加は体液貯留の最も早い指標
- 下腿の浮腫、靴や靴下の跡がつく
- 夜間の咳、横になると苦しい(起坐呼吸)、夜間発作性呼吸困難
- 労作時の息切れ、動悸、疲れやすさ、食欲低下、尿量減少
| 分類 | 身体活動の制限 |
|---|---|
| I度 | 心疾患はあるが身体活動の制限はなく、日常的な活動では症状が出ない |
| II度 | 軽度〜中等度の制限。安静時は無症状だが、日常的な身体活動で疲労・動悸・呼吸困難が生じる |
| III度 | 高度の制限。安静時は無症状だが、日常より軽い活動で症状が出る |
| IV度 | いかなる身体活動も制限される。安静時にも症状があり、労作で増悪する |
日常的な買い物で疲労・息切れが出るAさんはII度に相当すると考えられる。
参考: 急性・慢性心不全診療ガイドライン(日本循環器学会/日本心不全学会)/高血圧治療ガイドライン(日本高血圧学会)
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について