第115回 看護師国家試験 午後 問69 解説
📝 問題
Aさん(40歳、男性)は数年前に統合失調症と診断された。最近、仕事を辞めて、訪問看護を利用しながら1人で暮らしている。訪問看護師に「病気になってから孤独だ。これからどのように生きていけば良いか、同じような体験をしている人と話してみたい」と打ち明けた。Aさんの支援を行う上で連携する者として優先度が高いのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 同じ体験をした当事者であるピアサポーターとの出会いを支援する。
Aさんの訴えの核心は「孤独」と、「同じような体験をしている人と話してみたい」という希望である。 この願いに直接応えられるのは、精神疾患の当事者としての体験をもち、その体験を活かして同じ立場の人を支えるピアサポーターである。
ピアサポートには、専門職の助言では得られない力がある。「自分だけではない」という体験の共有、回復した先を具体的に示すロールモデルとしての存在、そして支えられる側が支える側にもなれるという相互性である。 看護師は、Aさんが地域のピアサポート活動や当事者会(セルフヘルプグループ)、ピアサポーターが活動する地域活動支援センターなどにつながれるよう情報を提供し、必要なら同行する。
他の職種も地域生活を支える重要な存在だが、いまAさんが表明したニーズとは一致しない。
- 1
公認心理師不正解
公認心理師は心理検査や心理面接、心理教育などを担う専門職で、不安や抑うつが強い場合には有用である。しかし「同じ体験をした人と話したい」というニーズに応えるのは専門職としての関わりではなく、当事者どうしの関係である。
- 2
成年後見人不正解
成年後見人は、判断能力が不十分な人に代わって財産管理や身上保護(契約・手続き)を行う。Aさんに判断能力の低下や財産管理上の問題は示されておらず、優先度は高くない。
- 3
ピアサポーター正解
ピアサポーターは、精神疾患や精神障害の当事者としての経験を活かして同じ立場の人を支援する人である。体験を分かち合うことで孤独感が和らぎ、回復のロールモデルを得られる。障害者総合支援法の地域移行支援・地域定着支援でもピアサポーターの活用が評価されている。
- 4
就労継続支援事業所の管理者不正解
就労継続支援事業所の管理者は、働く場と支援を提供する立場である。Aさんは最近仕事を辞めたばかりで就労希望は表明しておらず、いま優先すべきは孤独への対応である。将来的に本人が就労を望んだ段階で連携する。
📚 ここも一緒におさえておこう
地域生活の支援は、サービスの名前と、その底にある考え方の両方が問われる。 地域で暮らす精神障害者を支える資源には、精神科訪問看護、地域活動支援センター、就労移行支援・就労継続支援A型/B型、共同生活援助(グループホーム)、相談支援事業所などがある。 これらを本人の希望に沿って組み合わせるのが「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」である。
- ピアサポート=同じ課題や体験をもつ人どうしの支え合い。近年は事業所に雇用されて働くピアスタッフも広がっている
- セルフヘルプグループ(自助グループ)=当事者が主体的に運営する集まり。断酒会・AA(アルコール)、ナルコティクス・アノニマス〈NA〉(薬物)、家族会などがある
- リカバリー=症状がなくなることではなく、障害があってもその人らしい生き方や希望を取り戻していく過程。ピアサポートはこの考え方を体現する
- ストレングスモデル=欠点や症状ではなく、本人の強み・関心・資源に着目して支援を組み立てる考え方
参考: 厚生労働省「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進事業」/障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(地域相談支援・ピアサポート体制加算)
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について