第115回 看護師国家試験 午後 問107 解説
📝 問題
次の文を読み106〜108の問いに答えよ。 Aちゃん(7歳、女児)は両親と弟(2歳)の4人で暮らしている。下校中に転倒して右手を地面についた。夕食時に母親がAちゃんの異変を感じ、Aちゃんに尋ねたところ「転んで肘が痛い」と話したため救急外来を受診した。その結果、利き腕である右側の上腕骨の骨折が判明したため、入院して直ちに全身麻酔下で内固定術を受け、ギプス固定された。 術後1日。Aちゃんは看護師に「昨日の夜は、お母さんに食べさせてもらった。私には弟がいて、お世話が大変なの。私はお母さんに迷惑をかけたくない」と話した。 Aちゃんへの看護師の声かけで最も適切なのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 左手で食べる練習を提案し、学童期の子どもが自分でできることを増やす関わりが最も適切である。
Aちゃんは7歳の学童期にあり、Erikson〈エリクソン〉の発達課題は勤勉性 対 劣等感である。 「自分でできた」という経験が自信になる時期に、右手が使えず母親に食べさせてもらったこと、弟の世話で忙しい母親に迷惑をかけたくないという思いを語っている。 ここで有効なのは自分でできる方法を一緒に見つける提案で、左手で食べる練習は自立心と有能感を支えると同時に、母親への気兼ねにも応えている。
7歳は自分の状況を理解し、工夫を受け入れられる年齢である。 「食べさせてもらう」から「自分で食べられる」への転換は、入院中の子どもが取り戻せる数少ないコントロール感でもある。
- 1
「左手で食べる練習をしよう」正解
左手で食べる練習は、Aちゃん自身の力でできることを増やす提案である。学童期の勤勉性(できたという有能感)を支え、母親に頼らずに済むことでAちゃんの気がかりにも応えている。
- 2
「お姉ちゃんだから、頑張ろう」不正解
「お姉ちゃんだから」は、きょうだいの上という役割を理由に我慢を求める言葉である。「迷惑をかけたくない」という気持ちをさらに強め、甘えたい気持ちを言えなくさせてしまう。
- 3
「看護師さんが食べさせてあげるね」不正解
看護師が食べさせることは一時的には楽だが、自分でできる可能性を試す機会を奪う。学童期の子どもの自立を支える関わりとしては適切でない。
- 4
「お母さんのことは気にしなくていいよ」不正解
「気にしなくていい」は、家族を思うAちゃんの気持ちを打ち消す言葉である。気持ちは受け止めたうえで、具体的にどうすればよいかを一緒に考えることが必要である。
📚 一緒に確認しよう
入院中の子どもへの関わりは、発達段階に応じて何を支えるかが変わる。
- 入院した子どもは、退行(赤ちゃん返り)・分離不安・怒り・無関心などを示すことがあり、いずれも正常な反応として受け止める
- きょうだい(同胞)は「親を取られた」と感じたり我慢を強いられたりしやすく、同胞への配慮も家族看護の一部である
- 学童期には治療の理由や見通しを本人に分かる言葉で説明し、選べる部分は本人に選ばせる(コントロール感の保証)
| 時期 | 年齢の目安 | 発達課題 |
|---|---|---|
| ①乳児期 | 0〜1歳 | 基本的信頼 対 不信 |
| ②幼児期前期 | 1〜3歳 | 自律性 対 恥・疑惑 |
| ③幼児期後期 | 3〜6歳 | 自主性(積極性) 対 罪悪感 |
| ④学童期 | 6〜12歳 | 勤勉性 対 劣等感 |
| ⑤青年期 | 12〜20歳ごろ | 同一性〈アイデンティティ〉 対 同一性拡散 |
参考: E. H. Erikson の心理社会的発達段階論/日本小児看護学会 小児看護の日常的な臨床場面での倫理的課題に関する指針
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について