第115回 看護師国家試験 午後 問106 解説
📝 問題
次の文を読み106〜108の問いに答えよ。 Aちゃん(7歳、女児)は両親と弟(2歳)の4人で暮らしている。下校中に転倒して右手を地面についた。夕食時に母親がAちゃんの異変を感じ、Aちゃんに尋ねたところ「転んで肘が痛い」と話したため救急外来を受診した。その結果、利き腕である右側の上腕骨の骨折が判明したため、入院して直ちに全身麻酔下で内固定術を受け、ギプス固定された。 術後に注意すべきAちゃんの状態はどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 上腕骨の骨折でギプス固定を受けた術後に最も注意すべき状態は、前腕の血流障害から起こるVolkmann〈フォルクマン〉拘縮である。
小児が転倒して手をつき、肘の痛みを訴える——上腕骨顆上骨折の典型的な受傷機転である。 この部位の骨折で最も警戒すべき合併症がVolkmann〈フォルクマン〉拘縮で、骨折や腫脹、きついギプス固定によって前腕の筋区画内圧が上がり(コンパートメント症候群)、筋と神経が阻血に陥って元に戻らない拘縮を残す。
早期発見の鍵は5P(疼痛・蒼白・感覚異常・運動麻痺・脈拍消失)。 なかでも安静時に増強する強い痛みと、指を他動的に伸ばしたときの激痛が手がかりになる。 脈が触れるうちは大丈夫と考えるのは誤りで、脈拍の消失は最も遅く現れる所見である。
- 1
ばち指不正解
ばち指は慢性の低酸素状態(チアノーゼ性心疾患、慢性呼吸器疾患など)で指先が太鼓ばち状になる所見であり、骨折後の合併症ではない。
- 2
クリックサイン不正解
クリックサイン(Ortolani〈オルトラーニ〉徴候など)は発育性股関節形成不全の乳児で、股関節を開排したときに整復・脱臼のクリックが触れる所見である。7歳の上腕骨骨折とは関係がない。
- 3
Gowers〈ガワーズ〉徴候不正解
Gowers〈ガワーズ〉徴候は、床から立ち上がるときに自分の膝や大腿に手をついてよじ登るように起立する所見(登攀性起立)で、Duchenne型筋ジストロフィーなど近位筋の筋力低下でみられる。
- 4
Volkmann〈フォルクマン〉拘縮正解
上腕骨顆上骨折とその術後のギプス固定は、前腕のコンパートメント症候群からVolkmann拘縮に至る危険がある。指の色・温度・腫脹・しびれ・自動運動・疼痛を頻回に観察し、異常があれば直ちに医師へ報告する。
📚 国試でよく狙われるところ
ギプス固定後の観察は、末梢の循環障害・神経障害を見つけるための決まった項目で行う。
- 脈が触れていてもコンパートメント症候群は否定できない。痛みとしびれの変化が最も重要なサインである
- 異常があればギプスを割る(カットする)ことが第一の対応で、遅れれば筋壊死が不可逆になる
- 患肢は腫脹を軽減するため挙上するが、挙上しすぎると灌流が低下するため心臓の高さを目安にする
- 上腕骨顆上骨折では正中神経・橈骨神経・尺骨神経の麻痺(母指と示指でOKサインが作れないなど)も併せて確認する
| 徴候 | 内容 | 出現の順序 |
|---|---|---|
| Pain(疼痛) | 安静時にも強い痛み。指の他動的伸展で激痛 | 最も早い |
| Pallor(蒼白) | 末梢の色が白く、冷たくなる | 早期 |
| Paresthesia(感覚異常) | しびれ、触覚の低下 | 早期〜中期 |
| Paralysis(運動麻痺) | 指の自動運動ができない | 進行期 |
| Pulselessness(脈拍消失) | 末梢動脈が触知できない | 最も遅い |
参考: 小児整形外科テキスト(日本小児整形外科学会)/日本整形外科学会 症状・病気をしらべる(上腕骨顆上骨折、コンパートメント症候群)
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について