第112回 看護師国家試験 午前 問48 解説
📝 問題
右肺尖部の肺癌の胸壁への浸潤による症状はどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 右肺尖部の肺癌が胸壁へ浸潤すると、上肢の疼痛が生じる。
肺尖部(肺の上端)に生じた肺癌が胸壁へ浸潤したものはパンコースト腫瘍と呼ばれる。腫瘍が近傍を走行する腕神経叢(特に下部)を圧迫・浸潤すると、その支配領域である肩から上肢にかけての疼痛が生じる。
他の選択肢は本病態に合致しない、あるいは逆の所見である。肺尖部腫瘍が交感神経(星状神経節)を障害するとホルネル症候群を生じ、患側の縮瞳・眼瞼下垂・発汗低下がみられる。 散瞳ではなく縮瞳であり、閉眼困難(顔面神経麻痺の症状)も本病態では典型的でない。構音障害も、パンコースト腫瘍に特徴的な症状ではない(肺癌で起こる声の異常は反回神経麻痺による嗄声)。
腕神経叢とは
首から出て腕へ向かう神経が集まって束になった部分。肺尖部の腫瘍に圧迫されると、肩から上肢にかけて痛みが出る。
嗄声とは
声がかすれること。声帯を動かす反回神経が麻痺すると起こる。
- 1
散瞳不正解
肺尖部腫瘍の交感神経障害ではホルネル症候群として縮瞳が生じ、散瞳ではない。
- 2
構音障害不正解
構音障害はパンコースト腫瘍に特徴的な症状ではない。
- 3
閉眼困難不正解
閉眼困難は顔面神経麻痺の症状で、本病態の典型症状ではない(ホルネル症候群は眼瞼下垂)。
- 4
上肢の疼痛正解
腫瘍が腕神経叢を圧迫・浸潤し、肩から上肢にかけての疼痛が生じる。
📚 一緒に確認しよう
肺癌は、腫瘍のできた場所や性質によって特徴的な症状を起こす。
- 上大静脈症候群:顔面・上肢の浮腫、頸静脈の怒張。上縦隔への浸潤やリンパ節転移で生じる
- 反回神経麻痺:嗄声。左反回神経は大動脈弓を回るため左側で起こりやすい
- 横隔神経麻痺:横隔膜の挙上と呼吸困難
- ホルネル症候群:患側の縮瞳・眼瞼下垂・眼裂狭小・顔面の発汗低下
- 腫瘍随伴症候群:小細胞癌では抗利尿ホルモン不適合分泌症候群〈SIADH〉による低ナトリウム血症や、副腎皮質刺激ホルモンが出すぎて起こるクッシング症候群がみられる。扁平上皮癌では高カルシウム血症が多い
- パンコースト腫瘍は肩や上肢の痛みで発症するため、頸椎症や肩関節周囲炎と誤られやすい
参考: 呼吸器疾患・肺癌(パンコースト腫瘍)に関する標準的看護学教科書
出典:「第112回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について