第111回 看護師国家試験 午後 問67 解説
📝 問題
母親がAさん(27歳、統合失調症)に対して「親に甘えてはいけない」と言いながら、過度にAさんの世話をすることで、Aさんが混乱していた。 この親子関係を示すのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 矛盾するメッセージで相手を混乱させる関係は二重拘束(ダブルバインド)である
二重拘束(ダブルバインド)とは、言語的メッセージと非言語的メッセージ(あるいは2つの矛盾する要求)が同時に発せられ、どちらに従っても叱責される状況に相手が置かれ、逃げ場のない混乱に陥る関係のことをいう。本問では母親が「親に甘えてはいけない」と言いながら(言語)過度に世話をする(行動)という矛盾したメッセージを送っており、Aさんが混乱している。まさに二重拘束の状態である。
他の選択肢は、いずれも別の関係や心の働きを指す用語である。 共依存は、相手の世話をすることで自分の存在価値を保ち、互いに過度に依存し合う関係(アルコール依存症の家族などでみられる)。 同一視は他者の特性を自分に取り入れる防衛機制。 ネグレクトは養育・世話の放棄であり、本問の「過度に世話をする」状況とは逆である。
覚え方: 「言うことと、やることが矛盾=ダブルバインド」。かつて統合失調症の発症要因として論じられた概念で、国試では家族関係を示す用語(共依存・ダブルバインド・巻き込み)の識別が問われる。
防衛機制とは
不安やつらさから心を守るために、無意識のうちに働く心のはたらき。同一視や抑圧などがある。
- 1
共依存不正解
共依存は世話を通じて互いに過度に依存し合う関係。矛盾したメッセージで混乱させる状況とは異なる。
- 2
同一視不正解
同一視は他者の特性を自分に取り入れる防衛機制であり、親子間の矛盾したメッセージとは異なる。
- 3
ネグレクト不正解
ネグレクトは世話の放棄。本問は逆に過度に世話をしており当てはまらない。
- 4
二重拘束〈ダブルバインド〉正解
言語(甘えるな)と行動(過度な世話)の矛盾で逃げ場をなくし混乱させる典型的な二重拘束。
📚 ここも一緒におさえておこう
精神看護では、家族の関わり方が症状にどう響くかが問われる。用語の意味だけでなく、家族への働きかけが治療になる点まで押さえよう。 家族の高EE(感情表出)——批判的な言動や情緒的に巻き込まれすぎた関わりが強い家庭では、統合失調症の再発率が高いことが知られており、家族心理教育が再発予防に有効とされる。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 二重拘束〈ダブルバインド〉 | 矛盾する2つのメッセージを同時に受け、どちらに従っても責められる逃げ場のない状況 |
| 共依存 | 相手の世話をすることで自分の存在価値を保ち、互いに過度に依存し合う関係 |
| 巻き込み(高EE) | 家族の批判的・過干渉な関わり。再発の危険因子となる |
| 同一視 | 他者の特性を自分に取り入れる防衛機制 |
| ネグレクト | 必要な養育・世話を放棄すること |
出典:「第111回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について