第110回 看護師国家試験 午後 問91 解説
📝 問題
Aさん(64歳、女性、主婦)は、50歳で高血圧症と診断され、降圧薬を服用している。栄養指導を受け、食事療法も実施している。趣味はサイクリングと海外旅行である。数か月前からサイクリング中に息苦しさやめまいを感じるようになったため、かかりつけ医から紹介された病院を受診した。外来受診時のバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数24/分、脈拍40/分、血圧96/52mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%(room air)。Aさんは完全房室ブロックが疑われた。 Aさんに行われる検査で優先されるのはどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ 完全房室ブロックの診断でまず優先されるのは12誘導心電図検査。
Aさんは脈拍40/分の著明な徐脈があり、完全房室ブロック(第3度房室ブロック)が疑われている。房室ブロックの診断は心電図で心房と心室の興奮のつながり(P波とQRS波の関係)を確認して確定するため、非侵襲的で迅速に行える12誘導心電図検査が最も優先される。
完全房室ブロックでは、心房と心室がそれぞれ独立して興奮する房室解離となり、P波とQRS波が無関係に出現する。徐脈による息切れやめまい(脳血流低下)といったAさんの症状とも合致する。
呼吸数24/分と循環不全の徴候を伴い緊急性が高いため、まず心電図で不整脈の種類を確かめ、必要に応じてペーシングなど次の対応へ進む。 超音波・カテーテルは診断の決め手にならず、運動負荷はこの段階では危険である。
完全房室ブロックとは
心房から心室へ電気の刺激がまったく伝わらなくなった状態。心室は自前の遅いリズムで動くため著しい徐脈になる。
房室解離とは
心房と心室が互いに関係なく別々のリズムで動いている状態。心電図ではP波とQRS波がばらばらに出る。
- 1
心臓超音波検査不正解
心臓超音波検査は心機能・弁膜症の評価に有用だが、不整脈の診断そのものはできない。
- 2
12誘導心電図検査正解
P波とQRS波の関係から房室ブロックを直接診断でき、非侵襲的で迅速。最優先。
- 3
心臓カテーテル検査不正解
心臓カテーテル検査は侵襲的で、虚血の評価などに用いる。徐脈の初期診断には不適。
- 4
運動負荷心電図検査不正解
運動負荷は徐脈・失神リスクのある本例では危険で、この段階では禁忌に近い。
📚 混同しやすいので注意
房室ブロックは心電図のP波とQRS波の関係で分類する。 心電図所見からⅠ度〜Ⅲ度のどれかを選ばせる形で問われるので、「延びるだけ・延びて落ちる・一定で落ちる・無関係」の4つを度数と対にして覚えよう。
| 分類 | 心電図所見 |
|---|---|
| Ⅰ度 | PQ(PR)間隔が0.20秒以上に延長。QRSの脱落はない |
| Ⅱ度 Wenckebach(ウェンケバッハ)Ⅰ型(Mobitz〈モビッツ〉Ⅰ型) | PQ間隔が徐々に延長し、やがてQRSが1拍脱落する |
| Ⅱ度 MobitzⅡ型 | PQ間隔は一定のまま突然QRSが脱落する。完全房室ブロックへ移行しやすい |
| Ⅲ度(完全房室ブロック) | P波とQRS波が無関係に出現(房室解離)。PP間隔・RR間隔はそれぞれ一定で、心室は補充調律で動く |
MobitzⅡ型とⅢ度は症状や心拍数によりペースメーカーの適応となりうる。
出典:「第110回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について