第110回 看護師国家試験 午前 問112 解説
📝 問題
A さん(19歳、男性)は、幼い頃から忘れ物や遅刻が多く、落ち着いて授業を受けることが難しかった。学校からは精神科の受診を勧められていたが、受診することなく高校まで卒業した。卒業後は事務職として働きはじめたが、仕事上のトラブルで上司や同僚から叱責を受けたことをきっかけに、仕事を無断で休むことが多くなった。産業医から精神科外来を紹介され、両親とともに受診した。本人の診察と両親からの生育歴の聴取が行われ、注意欠如・多動性障害〈ADHD〉と診断された。 職場でA さんにみられる可能性が高い行動はどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ ADHDでは集中して仕事をすることができない行動がみられやすい。
注意欠如・多動症(ADHD〈エーディーエイチディー〉。かつては注意欠如・多動性障害とよばれた)は、不注意・多動性・衝動性を主症状とする発達障害である。 不注意により集中を保つことが難しく、仕事上のミスや忘れ物・遅刻が多くなる。Aさんも幼い頃から忘れ物や遅刻が多く落ち着いて授業を受けにくかった経過があり、職場で「集中して仕事をすることができない」行動がみられやすい。
他の選択肢は別の疾患・症状を指す。突然の意識消失はてんかん発作、戸締りの確認の繰り返しは強迫性障害、状況に合わない発声の繰り返しは音声チック(トゥレット症候群など)を思わせるもので、いずれもADHDの中核症状ではない。
ADHD〈エーディーエイチディー〉とは
注意を保つ・順番を待つといったはたらきが生まれつき苦手な脳の特性。大人になると多動は目立たなくなり、不注意が残りやすい。
音声チックとは
自分の意思とは関係なく、声や言葉が急に出てしまう症状。わざとではなく、止めようとしても長くは我慢できない。
- 1
仕事中に突然意識を失って倒れる。不正解
突然の意識消失はてんかん等を示唆し、ADHDの特徴ではない。
- 2
退勤時に戸締りの確認を繰り返す。不正解
確認行為の反復は強迫性障害の症状で、ADHDの特徴ではない。
- 3
集中して仕事をすることができない。正解
不注意により集中の持続が困難で、ADHDの中核症状に合致する。
- 4
状況にふさわしくない単語の発声を繰り返す。不正解
不適切な単語の反復発声は音声チックで、ADHDの中核症状ではない。
📚 混同しやすいので注意
発達障害は、特徴を入れ替えて「どの障害か」を問われる。障害名と特徴を対にして覚えよう。 発達障害は生まれつきの脳機能の特性であり、育て方やしつけが原因ではない。 叱責の積み重ねによる二次障害(自己評価の低下、抑うつ、不安、不登校・離職)を防ぐことが重要である。
| 障害 | 主な特徴 |
|---|---|
| 注意欠如・多動症〈ADHD〉 | 不注意(忘れ物・ケアレスミス・集中困難)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(順番が待てない) |
| 自閉スペクトラム症〈ASD〉 | 社会的コミュニケーションの困難、限定された興味と反復的な行動、感覚の過敏・鈍麻 |
| 限局性学習症〈SLD〉 | 全般的な知的発達に比べ、読み・書き・計算など特定の学習に著しい困難がある |
| チック症・Tourette(トゥレット)症候群 | 運動チック(まばたき・首振り)と音声チック(咳払い・発声)。両者が1年以上続くとTourette症候群 |
出典:「第110回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について