第110回 看護師国家試験 午前 問102 解説
📝 問題
A さん(77歳、男性)はAlzheimer型認知症で通所介護を利用している。入浴の時間になり、A さんは浴槽を見て「あれは、何?」と興味を示したが、介護職員が入浴を勧めると「今日はやめておく」と言う。看護師が再度入浴を勧めると、A さんは「今日は忙しくて時間がない」と答えている。 A さんへの看護師の対応で最も適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 入浴を拒否している状況では、時間をおいてから再度入浴を勧める。
Aさんは浴槽に興味を示しながらも「今日はやめておく」「時間がない」と入浴を拒否している。認知症のある人が拒否を示すときは、無理強いせず本人の気持ちを尊重し、タイミングを変えてアプローチすることが有効である。時間をおいてから再度勧めることで、本人の気分が変わり応じられることも多いため、これが最も適切である。
他の選択肢は、その日の入浴を手放すことになる。すぐ全身清拭へ切り替えれば湯につかれない。 浴槽の説明は、断る理由が「時間がない」である以上は届きにくい。 自宅に委ねるのは通所での清潔ケアの目的にそぐわない。 強引に進めれば行動・心理症状(BPSD〈ビーピーエスディー〉)を悪化させる。
BPSD〈ビーピーエスディー〉とは
認知症にともなって現れる、暴言・徘徊・不安・幻覚などの症状。記憶障害などの中核症状と違い、環境やかかわり方しだいで軽くも重くもなる。
- 1
全身清拭を行う。不正解
拒否を即諦めて清拭にすると入浴の機会を失う。まず再度の働きかけを。
- 2
浴槽の説明を行う。不正解
拒否理由は「時間がない」であり、浴槽の説明が有効とは限らない。
- 3
自宅で入浴してもらう。不正解
自宅入浴に委ねるのは通所での清潔ケアの目的にそぐわない。
- 4
時間をおいてから再度入浴を勧める。正解
無理強いせず時間をおいて再度勧めることで応じられることが多い。
📚 ここも一緒におさえておこう
入浴の拒否は、理由と工夫の組合せで問われる。理由を1つ挙げてから対応を選ぶ、と覚えよう。 認知症のある人の入浴拒否には必ず理由がある。拒否の理由を探ることが対応の出発点で、無理強いは介護抵抗や不信感を強める。
- 考えられる理由=裸になる羞恥心、寒い・怖い、湯温や音への不快、手順が分からない(失行)、体調不良、その人の生活習慣(夜に入るなど)
- 工夫=脱衣所・浴室を暖める、声かけは一つずつ短く、なじみの介助者、好きな入浴剤、時間帯を変える
- どうしても難しい日は部分浴(足浴・手浴)や清拭で清潔を保ち、次の機会につなげる
- 入浴時の注意=湯温は38〜41℃。食直後・空腹時・飲酒後は避ける。高齢者はヒートショックと長湯による脱水に注意する
出典:「第110回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について