第109回 看護師国家試験 午後 問98 解説
📝 問題
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。 A さん(72歳、男性)は右中大脳動脈領域の脳梗塞後、介護老人保健施設に入所した。左上下肢に軽度のしびれがあり、半側空間無視がある。入所後2日、A さんは箸を使って食事をするが、いつも左側に置かれた食器には食べ残しがあった。 A さんへの対応で適切なのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 半側空間無視で左側を見落とすため、食事途中で食器の配置を変え無視側に注意を向ける。
右中大脳動脈領域の脳梗塞では、左側に半側空間無視が起こりやすい。 Aさんは左に置かれた食器に注意が向かず、そこだけ食べ残している。 食事の途中で食器を並べ替え、左の料理を見えている右側へ動かすと、無視側にあった料理にも注意が向く。 声かけで左側を見てもらうことも合わせて行う。
他の選択肢は食べ残しの原因に届かない。 Aさんは箸を使えているので、スプーンに替えても左側は見落としたままになる。 滑り止めマットは食器がずれるときの工夫である。 反復唾液嚥下テストは飲み込む力を調べる検査で、注意の偏りは分からない。
半側空間無視とは
脳の損傷と反対側にあるものへ注意が向かなくなる状態。目が見えていないわけではなく、本人も見落としに気づいていない。
- 1
スプーンの使用を勧める。不正解
箸を使えており上肢操作の問題ではないため、スプーンへの変更は無視への対応にならない。
- 2
反復唾液嚥下テストを行う。不正解
反復唾液嚥下テストは嚥下評価で、半側空間無視による食べ残しには対応しない。
- 3
食事の途中で食器の配置を変える。正解
配置を変えて無視側の食器を認識できる位置に移すことで食べ残しを減らせる。適切。
- 4
食器の下に滑り止めマットを敷く。不正解
滑り止めマットは食器の安定化で、無視による食べ残しの改善には結びつかない。
📚 ここも一緒におさえておこう
半側空間無視は劣位半球(多くは右)の頭頂葉の損傷で起こりやすく、左側を見落とす。 同名半盲のように「見えない」のではなく「注意が向かない」状態で、本人は気づいていないことが特徴である。
- 評価には線分二等分試験・線分抹消試験・模写試験などが用いられる
- 急性期は健側から声をかけ、生活動線や危険物を健側に配置して安全を確保する
- 回復に応じて無視側へ意識的に注意を向ける訓練(食器の配置換え、声かけ、頭を向ける習慣づけ)を行う
- 車椅子のブレーキやフットレストの無視側を見落とすため、移乗時の転倒に注意する
出典:「第109回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について