第109回 看護師国家試験 午前 問93 解説
📝 問題
悪性胸膜中皮腫で終末期にある A さん(60歳、男性)。入院後2週、A さんの身体状態は急激に悪化し、A さんは「息が吸えない。苦しい。何とかしてくれ」と訴え、眉間にしわを寄せて口呼吸をしている。軽度の喘鳴がみられ、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)は88〜92 %(経鼻カニューレによる酸素療法2L/分)である。また、頻繁に体位を変えて落ち着きがなく、つじつまが合わない訴えと場所の見当識障害もみられる。毎日面会に来ている妻は「どうなってしまったのでしょうか。苦しそうでかわいそう」と涙ぐみ、ベッドから離れたところで座っている。 A さんの妻への看護師の説明で適切なのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 妻へは「タッチングをするとAさんの安心感につながる」と説明するのが適切。
終末期の呼吸困難に不穏と見当識障害が重なり、妻は恐れや戸惑いからベッドを離れて座っている。 看護師の役割は、妻が本人に安心を届けられる形で関われるよう支えることである。 タッチングは、言葉が届きにくい状態でも安心を伝えられる非言語的コミュニケーションであり、妻自身も「何かしてあげられた」と思える。
口腔内吸引は、喘鳴があっても本人の苦痛を増やすことがある。 見当識障害を否定しない関わりは大切だが、この場面で妻がいちばん知りたいのは「自分に何ができるか」である。 自宅で待機するよう勧める説明は、家族が最期に立ち会う機会を奪ってしまう。
- 1
「A さんが場所を間違っても否定しないで下さい」不正解
見当識障害への一般的助言だが、この場面で妻に最も必要な関わり方の助言ではない。
- 2
「口腔内吸引をすると A さんの呼吸が楽になります」不正解
口腔内吸引は苦痛を伴うことがあり、呼吸を楽にする確実な方法ではなく安易に勧めない。
- 3
「タッチングをすると A さんの安心感につながります」正解
タッチングは非言語的に安心感を伝えられ、妻が本人に寄り添う手立てとなる。
- 4
「A さんの症状が落ち着くまで自宅で待機して下さい」不正解
終末期に家族を自宅待機させることは、そばで過ごす貴重な時間を奪い不適切。
📚 ここも一緒におさえておこう
終末期に急に不穏・つじつまの合わない訴え・見当識障害が現れたら終末期せん妄を考える。 低酸素・脱水・電解質異常・薬剤など是正できる原因を探しつつ、静かな環境と家族の穏やかな関わりで安心を支える。
- 家族には聴覚は最後まで保たれやすいことを伝え、手を握る・名前を呼ぶ・好きな音楽をかけるなど、具体的にできることを示す。
- 死前喘鳴に対する頻回の吸引は苦痛を与えることがあり、体位の工夫や分泌を抑える薬剤を優先することが多い。
- 家族が「かわいそう」「見ているのがつらい」と離れてしまうときは、その気持ちをまず受け止めたうえで、そばにいられる方法を一緒に探す。
- 死別後の悲嘆に寄り添うグリーフケアは、看取りの前(予期悲嘆への支援)からすでに始まっている。
出典:「第109回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について