第109回 看護師国家試験 午前 問100 解説
📝 問題
A さん(80歳、男性)は、妻(80歳)と2人暮らし。血管性認知症でパーキンソニズムがみられる。認知症高齢者の日常生活自立度判定基準ランクⅡb、要介護2。普段は妻が A さんの身の回りの世話をしているが、妻が入院したため短期入所療養介護のサービスを受けることになった。入所時の A さんは歩行開始困難、加速歩行、すくみ足などの歩行障害がみられた。A さんは「最近、家の中でつまずくことが多くなりました」と入所中の施設の看護師に話した。 A さんへの歩行指導で適切なのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ すくみ足のある歩行では「足踏みをしてから歩く」よう指導する。
パーキンソニズムでは、歩行開始困難・すくみ足・加速歩行(突進現象)などの歩行障害がみられる。 すくみ足には、その場で足踏みをしてリズムをつけてから一歩を踏み出す、号令をかける、床に目印線を引くといった外的刺激(キューイング)が有効である。 「足踏みをしてから歩く」よう指導するのが適切である。
他の3つは、いずれも転倒の危険をかえって高める。 素早い方向転換はバランスを崩しやすく、足元へ目線を落とすと前傾姿勢が強まる。すり足は、すでに家の中でつまずいているAさんのつまずきをさらに増やすので、足を高めに上げて歩くよう促す。
パーキンソニズムとは
パーキンソン病に特徴的な症状(振戦・筋固縮・無動・姿勢反射障害)が、脳血管障害や薬の影響など別の原因で現れている状態。
- 1
歩行時の方向転換は素早く行うようにする。不正解
素早い方向転換はバランスを崩しやすく、ゆっくり大きく回る方が安全。
- 2
目線を足元に向けて歩くようにする。不正解
目線を足元に向けると前傾が強まり、加速歩行や前方転倒を助長する。
- 3
足踏みをしてから歩くようにする。正解
足踏みでリズムをつけてから踏み出すことは、すくみ足への有効な対処(キューイング)である。
- 4
歩行時はすり足で歩くようにする。不正解
すり足はつまずきの原因となり、Aさんの転倒リスクをむしろ高める。
📚 ここも一緒におさえておこう
すくみ足は、動き出しのきっかけがつかめない状態。 そこで外からリズムや目印を与えるキューイングが有効になる。 号令、メトロノーム、床のテープ、その場足踏み、大きくまたぐ動作などが使える。
- パーキンソン病の四大徴候は安静時振戦・筋固縮(歯車様)・無動(寡動)・姿勢反射障害。
- 歩行の特徴は小刻み歩行・前傾前屈姿勢・すくみ足・加速歩行(突進現象)で、狭い場所・方向転換・目的地の手前で悪化しやすい。
- 方向転換はゆっくり大きく回る、目線は前方に向ける、履物は踵のある滑りにくいものを選ぶ。
- 重症度はHoehn-Yahr(ホーン・ヤール)分類(Ⅰ〜Ⅴ度)で評価し、Ⅲ度以上かつ生活機能障害度Ⅱ度以上で指定難病の医療費助成の対象となる。
| 血管性認知症 | Alzheimer型認知症 | |
|---|---|---|
| 経過 | 階段状に悪化し、日や時間で変動する | ゆるやかに進行する |
| 特徴 | まだら認知症、意欲低下、感情失禁。麻痺・構音障害・パーキンソニズムなど神経症状を伴いやすい | 近時記憶の障害が目立ち、病識に乏しい |
| 危険因子 | 高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動、喫煙 | 加齢、遺伝的素因 |
出典:「第109回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について