第108回 看護師国家試験 午前 問32 解説
📝 問題
疫学的因果関係があると判断できるのはどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ 疫学的因果関係があると判断できるのは、特定の要因と疾病の関係に特異的な関連が存在する場合である。
疫学で「原因と結果」を判断するときは、Hill(ヒル)の基準という複数の視点を使う。関連の強さ・一致性・特異性・時間的な前後関係・量と反応の関係などである。 「特定の要因と疾病の関係に特異的な関連が存在する」は、このうち関連の特異性にあたり、因果関係を支持する。
他の3つは、いずれも因果を否定する側の所見である。 オッズ比が1であれば、要因と疾病に関連はない。 生物学的な研究で得られた事実と食い違うことは整合性を欠き、関連が散発的であることは一致性を欠く。
選択肢を「因果を支持するか、否定するか」で仕分けると解きやすい。
オッズ比とは
ある要因があった群と無かった群で、病気の起こりやすさを比べた値。1なら差がないことを示す。
- 1
要因と疾病の関係が生物学的研究で得られた事実と異なる。不正解
既存の生物学的研究の事実と矛盾することは整合性を欠き、因果関係を否定する方向である。
- 2
特定の要因と疾病の関係に特異的な関連が存在する。正解
特定の要因と特定の疾病に特異的な関連が認められること(関連の特異性)は、因果関係を支持する基準にあたる。
- 3
要因と疾病の関係でオッズ比が1である。不正解
オッズ比1は要因と疾病に関連がないことを意味し、因果関係の根拠にはならない。
- 4
要因と疾病の関係が散発的である。不正解
関連が散発的で一貫性を欠くことは因果関係を否定する方向である。
📚 ここも一緒におさえておこう
Hillの基準は、因果関係を判断するための視点の集まりで、すべてを満たす必要はない。 ただし「原因が結果に先行する」という時間的先行性だけは必須である。
- 相対危険度=曝露群の罹患率÷非曝露群の罹患率。コホート研究で用いる。
- オッズ比は症例対照研究で用い、相対危険度の近似となる。
- 値が1なら関連なし、1より大でリスク増加、1未満で予防的に働くと読む。
- コホート研究は原因と結果の前後関係を確かめやすいが、費用と時間がかかる。
- 症例対照研究は、まれな疾患を調べるのに適している。
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 時間的先行性 | 要因への曝露が疾病の発生に先行する(必須) |
| 関連の強固性 | 相対危険度やオッズ比が大きい |
| 関連の一致性(一貫性) | 異なる集団・研究でも同様の関連が得られる |
| 関連の特異性 | 特定の要因が特定の疾病と結びつく |
| 量-反応関係(生物学的勾配) | 曝露量が増えるほど発生が増える |
| 整合性・生物学的妥当性 | 既知の生物学的知見と矛盾しない |
参考: 標準公衆衛生・社会医学(疫学的因果関係の判定基準)/Hillの因果性判定基準
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について