第107回 看護師国家試験 午前 問104 解説
📝 問題
次の文を読み103〜105の問いに答えよ。在胎38週4日、骨盤位のため予定帝王切開術で出生した男児。出生後2時間。児のバイタルサインを確認したところ、直腸温37.5℃、呼吸数75/分、心拍数160/分、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)87%であった。心雑音はなし。鼻翼呼吸および呻吟がみられた。四肢末端にチアノーゼあり。 この児の状態で考えられるのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 予定帝王切開の正期産児が出生後まもなく多呼吸・呻吟を呈しており、新生児一過性多呼吸(TTN)が考えられる。
本児は予定帝王切開で出生した正期産児で、出生後2時間に呼吸数75/分の多呼吸、鼻翼呼吸・呻吟、四肢末端のチアノーゼ、SpO2の低下を呈している。 産道を通らない帝王切開では、経腟分娩でみられる肺水の吸収の促進が乏しく、肺胞内の肺水(胎児肺液)の吸収遅延により一過性の呼吸障害を来しやすい。これが新生児一過性多呼吸(TTN)である。 多くは数日以内に自然軽快する。
新生児の呼吸障害の鑑別は「分娩様式・在胎週数・羊水性状」から絞る。 羊水混濁がないため胎便吸引症候群(MAS)は考えにくい。正期産なので、肺サーファクタント不足による呼吸窮迫症候群(RDS)も典型ではない。心雑音がないため、心室中隔欠損症(VSD)も否定的である。 「予定帝王切開+正期産+出生後まもなくの多呼吸」という組み合わせがTTNの典型像である。
呻吟とは
息を吐くときに「うーん」とうなるような音が出ること。声門を狭めて肺がしぼむのを防ごうとする、呼吸が苦しいサイン。
- 1
胎便吸引症候群(MAS)不正解
羊水混濁がなく、胎便吸引症候群(MAS)を疑う所見がないため考えにくい。
- 2
呼吸窮迫症候群(RDS)不正解
呼吸窮迫症候群(RDS)はサーファクタント不足による早産児に多く、正期産の本児では典型的でない。
- 3
心室中隔欠損症(VSD)不正解
心雑音がなく、心室中隔欠損症(VSD)を示す所見はみられない。
- 4
新生児一過性多呼吸(TTN)正解
予定帝王切開の正期産児で肺水の吸収遅延による一過性多呼吸を呈しており、新生児一過性多呼吸(TTN)が最も考えられる。
📚 混同しやすいので注意
新生児の多呼吸は60回/分以上が目安である。 呼吸障害の重症度は、陥没呼吸・鼻翼呼吸・呻吟などを評価するSilverman(シルバーマン)スコアで判定する。
| 疾患 | 背景 | 特徴 |
|---|---|---|
| 新生児一過性多呼吸(TTN) | 帝王切開、正期産児 | 肺水の吸収遅延。生後まもなくの多呼吸で、多くは数日以内に軽快する |
| 呼吸窮迫症候群(RDS) | 早産児(肺サーファクタント不足) | 呻吟・陥没呼吸が進行。胸部X線でスリガラス様陰影と気管支透亮像。人工サーファクタントを投与する |
| 胎便吸引症候群(MAS) | 羊水混濁、過期産、胎児仮死 | 胎便を気道に吸引。重症では気胸や新生児遷延性肺高血圧症を合併する |
| 先天性心疾患 | 心雑音、チアノーゼ | 酸素投与で改善しにくいチアノーゼ(高濃度酸素負荷試験で鑑別) |
参考: 医療情報科学研究所編『母性看護学』/日本周産期・新生児医学会 新生児呼吸障害の指針
出典:「第107回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について