第106回 看護師国家試験 午前 問117 解説
📝 問題
次の文を読み115〜117の問いに答えよ。Aさん(70歳、男性)。妻(74歳)と2人で暮らしている。Aさんがトイレに入ったまま戻ってこないので妻が見に行くと、トイレで倒れていた。妻が発見直後に救急車を要請した。救急隊からの情報ではジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅱ-20で右片麻痺があり、バイタルサインは、体温36.5℃、呼吸数16/分、脈拍108/分、血圧200/120mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉96%であった。入院から4週が経過し、病状が安定して意識が回復した。Aさんは後遺症として運動性失語が残り、言葉がうまく発せられないため涙ぐむことがあった。妻は面会後「夫が話す言葉が分からず、どう接すればよいか分からない」と言って戸惑っていた。 妻に対する対応で最も適切なのはどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ 看護師も同席してAさんと妻が話す場をつくる。
妻は「夫が話す言葉が分からず、どう接すればよいか分からない」と、関わり方そのものに困っている。 Aさんも運動性失語のために伝えられず、涙ぐんでいる。 どちらも、伝え合う方法をまだ持っていない。
看護師が同席すれば、Aさんがうなずきや指さしで伝えようとしていることを、その場で妻と一緒に読み取れる。 伝わるやり方を実際に確かめられ、妻の戸惑いにも寄り添える。
残る3つは、妻の困りごとに届かない。 いつもどおり話すよう伝えても、どうすればよいか分からないという妻の問いには答えていない。 リハビリテーションで話せるようになると保証することは、確かめられない見通しを約束することになる。 分かりやすい言葉で話しかける助言は聞き手側の工夫で、妻が困っている「Aさんの言葉が分からない」ほうには効かない。
運動性失語とは
話す働きが障害され、言いたい言葉が出てこない状態。聞いて理解する力は比較的保たれるため、伝わらないもどかしさを強く感じる。
- 1
「いつもどおり話をしてあげてください」不正解
妻は「どう接すればよいか分からない」と言っており、いつもどおりでよいと伝えても、具体的なやり方は分からないままである。
- 2
「看護師も同席してAさんとお話ししましょう」正解
看護師が同席すると、Aさんの表情・うなずき・指さしを妻と一緒に読み取れ、その場で伝わるやり方を確かめられる。
- 3
「リハビリテーションで話せるようになりますよ」不正解
回復の程度は約束できるものではない。見通しを保証する言葉は、妻のいまの困りごとにも答えていない。
- 4
「分かりやすい言葉で話しかけてあげてください」不正解
運動性失語では聞いて理解する力は比較的保たれており、話しかけ方を変えても、妻が「Aさんの言葉が分からない」という困りごとは残る。
📚 混同しやすいので注意
失語は運動性と感覚性を入れ替えて問われる。「話せるか」と「分かるか」の2つで見分けよう。運動性失語はBroca(ブローカ)失語、感覚性失語はWernicke(ウェルニッケ)失語ともよばれる。
| 運動性失語 | 感覚性失語 | |
|---|---|---|
| 話すこと | たどたどしく、言葉が出にくい | 流暢に話すが内容が通じない |
| 聞いて分かること | 比較的保たれる | 障害される |
| 本人の気づき | 伝わらないことに気づき、もどかしさを感じる | 誤りに気づきにくい |
| 関わり方 | はい・いいえで答えられる聞き方にする。絵カードや指さしを使う | 短く区切って話す。身ぶりや表情を添える |
参考: 医療情報科学研究所編『病気がみえる vol.7 脳・神経』/医学書院『系統看護学講座 成人看護学 脳・神経』
出典:「第106回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について