第115回 看護師国家試験 午後 問119 解説
📝 問題
次の文を読み118〜120の問いに答えよ。 大型の台風が直撃するという予報を受けて、午前9時、病院では災害対策本部が立ち上がった。また、病院の所在する市から避難所への看護師派遣の要請を受け、対応することになった。 この台風による大雨の影響で、大規模な土砂災害が発生した。病院から派遣されて避難所内を巡回していた看護師は、元気がないCさん(66歳、女性)のことが気になり、毎日声をかけていた。発災3日目、Cさんは避難所内を巡回していた看護師を呼び止めて話をした。Cさんは、土砂災害があったときに娘と自宅にいたが、Cさんが先に屋外に避難したことを悔やんでいた。「娘の行方がまだ分からない。静かになると、あのときのことを思い出して涙が止まらなくなる」と悲しんでいる。 このときの看護師のCさんへの対応で適切なのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ まず睡眠と食事の状況を尋ね、心身の消耗の程度を確かめるのが適切である。
Cさんは娘が行方不明というあいまいな喪失のただ中にあり、自分が先に避難したことへの自責と、思い出して涙が止まらなくなる侵入的な想起に苦しんでいる。 この段階で看護師がすべきことは、体験を語らせることでも励ますことでもなく、睡眠・食事・水分がとれているかを確認することである。 心身の消耗の程度が分かり、必要な支援や専門チームにつなぐ入口になる。
これは災害時の心理的支援の基本であるサイコロジカル・ファーストエイド〈PFA〉の「見る・聞く・つなぐ」に沿った関わりでもある。
- 1
睡眠と食事の状況を聞く。正解
睡眠・食事の状況を尋ねることは、身体的消耗と心理的反応の程度を評価する具体的な方法であり、Cさんに負担をかけずに始められる。不眠や食欲不振が続いていれば、医療やこころのケアチーム(DPAT等)につなぐ判断ができる。
- 2
娘のことを早く忘れるよう促す。不正解
「早く忘れるように」は、娘を案じるCさんの気持ちを否定するもので、深い孤立感を生む。悲嘆は忘れることで解決するものではない。
- 3
待っていれば娘は見つかると励ます。不正解
「待っていれば見つかる」は根拠のない保証であり、そうならなかったときに支援者への信頼を失わせる。確かなことだけを伝え、分からないことは分からないと伝える。
- 4
気分転換をするために近所の友人と新しいことを始めるよう提案する。不正解
気分転換の提案はCさんの現在の状態と時期に合っていない。悲しみのただ中にいる人に新しい活動を促すことは、気持ちを分かってもらえないという体験になる。
📚 まず何をするか
災害時の心理的支援は、専門的な心理療法の前に「生活が成り立っているか」を確かめるところから始まる。
- 心理的デブリーフィング(発災直後に体験を強制的に語らせること)は推奨されていない
- 急性ストレス障害〈ASD〉=症状が3日〜1か月続くもの。心的外傷後ストレス障害〈PTSD〉=1か月以上続くもの
- 行方不明のように喪失が確定しない状態は「あいまいな喪失」と呼ばれ、悲嘆の過程が進みにくく長期の支援を要する
- 支援者自身も二次的外傷性ストレスを受ける。チームでの振り返りと休息の確保が必要である
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| ①見る(Look) | 安全を確認し、緊急に対応が必要な人・深刻なストレス反応を示す人を把握する |
| ②聞く(Listen) | 声をかけ、必要としていることや気がかりを聴く。無理に話させない |
| ③つなぐ(Link) | 生活の基本的ニーズ、情報、大切な人や社会的支援、専門的支援につなぐ |
参考: 心理的応急処置〈サイコロジカル・ファーストエイド〉フィールド・ガイド(WHO)/災害派遣精神医療チーム〈DPAT〉活動要領(厚生労働省)
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について