第115回 看護師国家試験 午前 問99 解説
📝 問題
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。 Aさん(60歳、女性、会社員)は15年前に糖尿病と診断され血糖降下薬を服用していた。その後、微量のアルブミン尿が出現し、腎機能は徐々に悪化したため、10年前からインスリン療法が開始された。Aさんは外来受診時に労作時の息切れを訴えており、肺野の水泡音と下肢の浮腫が認められ、精査加療目的で入院した。入院時は、身長155cm、体重65kgで1か月前から5kg増加している。体温36.3℃、呼吸数28/分、脈拍82/分、血圧160/82mmHgであった。血液検査データは、Hb8.5g/dL、HbA1c8.5%、アルブミン3.1g/dL、クレアチニン3.5mg/dL、K4.0mEq/Lで、推算糸球体濾過量〈eGFR〉は15mL/分/1.73m²であった。 その後、Aさんには連続携行式腹膜透析法〈CAPD〉が開始された。同時に腹膜透析の方法と必要な自己管理についての指導が開始となった。現在の血液検査データは、Hb9.0g/dL、アルブミン2.9g/dL、クレアチニン2.5mg/dL、K3.8mEq/Lであった。また腹膜透析開始後の除水量は平均450mL/日、尿量は平均900mL/日であった。 現在のAさんに対する食事指導の内容で適切なのはどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ 腹膜透析では連日持続的にカリウムが除去されるため制限は不要。
腹膜透析は連日持続的に行われるため、血液透析に比べてカリウムが除去されやすく、むしろ低カリウム血症に傾きやすい。Aさんの血清K は3.8mEq/Lで基準範囲(3.5〜5.0mEq/L)内にある。
むしろ現在のAさんで注意すべきはアルブミン2.9g/dLの低下である。腹膜透析では透析液中に蛋白(アルブミン)が漏出するため、蛋白質は制限するのではなく0.9〜1.2g/kg体重/日を確保する。
水分は「除水量+尿量」を目安とし、除水450mL+尿量900mL=約1,350mLが1日の排出量にあたる。数値を1つずつ基準と照合すれば正誤が判定できる問題である。
- 1
蛋白質は0.2g/kg/日とする。不正解
0.2g/kg/日は極端に少ない。
- 2
カリウムを含む食品の制限はない。正解
連日持続的に透析されるためカリウムは除去されやすく、K 3.8mEq/Lと基準範囲内である現在は制限の必要がない。
- 3
水分摂取量は除水量と同量とする。不正解
水分摂取量の目安は「除水量+尿量」である。
- 4
総エネルギーは50kcal/kg/日とする。不正解
慢性透析患者のエネルギーは30〜35kcal/kg体重/日が基準
📚 関連知識
慢性透析患者の食事療法基準は、血液透析と腹膜透析で水分・食塩・カリウムの扱いが異なる。
- 腹膜透析は蛋白喪失があるため低栄養に傾きやすく、アルブミン値の推移を必ず追う
- 除水不良(体重増加・浮腫)は透析液の濃度調整や腹膜機能の評価につながる重要なサイン
- 残腎機能があるうちは尿量が保たれ、水分・カリウムの制限は緩やかでよい
| 項目 | 血液透析(週3回) | 腹膜透析 |
|---|---|---|
| エネルギー | 30〜35kcal/kg体重/日 | 30〜35kcal/kg体重/日(透析液由来の糖質を含む) |
| 蛋白質 | 0.9〜1.2g/kg体重/日 | 0.9〜1.2g/kg体重/日 |
| 食塩 | 6g/日未満 | 除水量(L)×7.5+尿量(L)×5(g/日) |
| 水分 | できるだけ少なく | 除水量+尿量 |
| カリウム | 2,000mg/日以下 | 原則制限なし(高カリウム血症があれば制限) |
| リン | 蛋白質(g)×15mg/日以下 | 蛋白質(g)×15mg/日以下 |
体重は原則として標準体重(ドライウェイト)を用いる。
参考: 慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版(日本透析医学会)/腹膜透析ガイドライン(日本透析医学会)
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について