第114回 看護師国家試験 午後 問115 解説
📝 問題
次の文を読み115〜117の問いに答えよ。 Aさん(65歳、女性)は、夫と2人で暮らしている。友人の死去後、食事量が減り、1か月前から気分の落ち込みが強くなった。夫が積極的に散歩に誘っても、Aさんは「体がだるい」「何をしても意味がない」と話し、寝つきも悪くなり、日中ほとんどの時間を臥床して過ごすようになった。心配した夫に連れられて精神科外来を受診したところ、うつ病と診断され、選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉と不眠時の睡眠薬が処方された。夫から精神科外来の看護師に「日常生活で気を付けることはありますか」と質問があった。 Aさんと夫に看護師が説明する内容で適切なのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 抗うつ薬は飲み始めに吐き気や下痢が出やすいことを、あらかじめ伝える。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉は、脳だけでなく消化管のセロトニン受容体にも作用する。そのため飲み始めの1〜2週間に吐き気・下痢などの消化器症状が出やすい。
多くは飲み続けるうちに軽くなるが、知らされていないと「副作用が出た」と驚いて自分でやめてしまう。効果が現れるまでには2〜4週間かかるため、この時期を乗り切れるかどうかが治療の分かれ目になる。
- 1
「毎朝運動をする習慣を作りましょう」不正解
うつ病の急性期は休養が最優先で、日中ほとんど臥床している人に毎朝の運動を課すと、できないこと自体が自責感を強めてしまう。活動は回復に合わせて少しずつ増やす。
- 2
「食欲がないときは食事の回数を減らしましょう」不正解
食欲がないときこそ、1回量を減らして回数を増やし、食べられるものから量を確保する。回数を減らすとエネルギーと水分がさらに減り、脱水や低栄養を招く。
- 3
「薬の飲み始めは吐き気や下痢に注意してください」正解
飲み始めに出やすい消化器症状をあらかじめ伝えておけば、驚いて自分でやめてしまうことを防げる。
- 4
「眠れないときは睡眠薬を早朝に飲んで構いません」不正解
睡眠薬を早朝に飲むと、日中に眠気・ふらつき・注意力の低下が残る(持ち越し効果)。65歳では転倒や骨折の危険が高まり、睡眠リズムもさらに乱れる。
📚 一緒に確認しよう
うつ病の看護では、薬の説明とあわせて関わり方も押さえておく。
- 急性期は休養が治療そのもの。励ましや気晴らしの勧めは負担になる
- 「死にたい」という訴えは、動けるようになった回復期にこそ注意が必要
- 自己判断で急にやめるとめまいや不安が出ることがある。減らすときは医師の指示に従う
| 時期 | 副作用 | 観察・対応 |
|---|---|---|
| 開始初期(数日〜2週) | 悪心・嘔吐・下痢・食欲不振 | 多くは軽減する。食後服用、少量からの開始 |
| 開始初期・増量時 | 賦活症候群(不安・焦燥・不眠・衝動性) | 特に若年者で自殺関連事象に注意し、変化を家族とも共有 |
| 投与中 | 低ナトリウム血症(SIADH) | 高齢者で多い。倦怠感・食欲不振・意識障害に注意 |
| 投与中 | 性機能障害、体重変化 | 言い出しにくいため医療者から確認する |
| 併用時 | セロトニン症候群(発熱・発汗・振戦・ミオクローヌス・下痢・錯乱) | 他の抗うつ薬・トリプタンなどとの併用に注意 |
| 急な中止時 | 中断症候群(めまい・感覚異常・不安) | 自己判断で中止せず、減量は医師の指示で漸減 |
参考: 日本うつ病学会診療ガイドライン(日本うつ病学会)
出典:「第114回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について