第114回 看護師国家試験 午後 問113 解説
📝 問題
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。 Aさん(21歳、女性、大学生)は、1人で暮らしている。友人関係のトラブルでうつ状態になり、3か月前から精神科クリニックへの通院を開始した。頓用の抗不安薬を処方され不安が高まったときに服用していたが、徐々に酩酊や陶酔感を得るために服用するようになった。最近は指示された抗不安薬の量では酩酊や陶酔感が得られなくなってきたため、数日分の薬を溜めて一度に大量に服用するようになった。抗不安薬を大量に使用した翌日は大学を休むことが続いていた。 ある日の夜、Aさんと突然連絡がつかなくなったことを心配した母親が、Aさんのアパートを訪ねると、意識を失っているAさんを発見した。すぐに救急車を呼び、Aさんは救命救急センターへ搬送された。翌朝、同じ病院の精神科病棟に転棟し、器質的検査および生理的検査では異常が認められなかった。救急隊からの情報によると、アパートには抗不安薬を大量に服用した痕跡があった。 入院後48時間から72時間にかけてAさんに出現する可能性が高い症状はどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 薬が急に絶たれたことによる離脱症状として、幻覚が出現しうる。
Aさんは抗不安薬を繰り返し大量に飲んでいた。入院で薬が急に絶たれると離脱症状が現れる。
ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は、アルコールと似たしくみで脳のはたらきを抑える。そのため離脱症状もアルコールとよく似ており、中断後48〜72時間にかけて、不安・不眠・振戦・発汗から幻覚・けいれん・せん妄へと進みうる。
器質的検査・生理的検査で異常がないことも大切な情報である。意識障害の原因が頭の中の病変や代謝の異常ではなく、薬の影響として経過をみる段階だと分かる。
- 1
幻覚正解
中断から数日のうちに不安・不眠・振戦・発汗が現れ、重いと幻覚(幻視が多い)やけいれん、せん妄に至る。48〜72時間はその症状が出やすい時期にあたる。
- 2
感情鈍麻不正解
感情鈍麻は感情の起伏が乏しくなる状態で、統合失調症の陰性症状として知られる。離脱期に特徴的な症状ではない。
- 3
思考途絶不正解
思考途絶は、話している途中で考えの流れが突然途切れるもので、統合失調症でみられる。離脱期に予測される症状ではない。
- 4
妄想気分不正解
妄想気分は「何か大変なことが起こりそうだ」という不気味な感覚で、統合失調症の初期にみられる。離脱症状として典型的ではない。
📚 一緒に確認しよう
脳のはたらきを抑える物質(アルコール・抗不安薬・睡眠薬)は、やめたときに脳が興奮に振れる。
- 離脱を防ぐため、これらの薬は突然やめずに少しずつ減らす
- 離脱期は転倒や自傷の危険が高く、環境整備とこまめな観察が必要になる
- アルコールの離脱では、ウェルニッケ脳症を防ぐためビタミンB₁を補う
- 覚醒剤など興奮させる物質の離脱では、逆に抑うつ・過眠・強い渇望が中心になる
| 時期 | 現れる症状 |
|---|---|
| 中断後6〜24時間 | 不安、いらだち、不眠、発汗、手指振戦、頻脈、血圧上昇 |
| 中断後24〜48時間 | けいれん発作(全般性強直間代発作)が起こりうる |
| 中断後48〜72時間 | 幻覚(幻視が多い)、見当識障害、興奮=振戦せん妄の時期 |
| 回復期 | 症状は数日から1〜2週で軽減するが、不眠や不安は遷延することがある |
参考: 薬物依存症の治療・回復支援に関する手引き(厚生労働省)/ICD-10 精神および行動の障害
出典:「第114回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について