第113回 看護師国家試験 午後 問109 解説
📝 問題
次の文を読み109〜111の問いに答えよ。 Aさん(65歳、男性)は、妻と自営業を営んでおり、2人で暮らしている。2か月前に仕事で大きな失敗をし、謝罪と対応に追われ、あまり夜に眠れなくなり、食欲不振が続いている。1か月前から気分が落ち込み、仕事で妻から間違いを指摘されたことで自信をなくしていた。Aさんは死んでしまいたいと思い、夜に自宅でロープを使って自殺を図ろうとしたところを妻に見つけられた。妻に付き添われ、精神科病院を受診し、うつ病と診断された。受診当日に入院し、抗うつ薬の内服が開始された。Aさんは「生きていても仕方がない。どうせ誰も分かってくれない」と看護師に話した。 このときの看護師の対応で適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 希死念慮のある患者には、つらさを受け止めて心配していることを伝える共感的な対応が適切である。
「生きていても仕方がない」「どうせ誰も分かってくれない」という言葉は、希死念慮の表れである。 ここで必要なのは、つらさをそのまま受け止め、「私は心配しています」と自分を主語にして関心を伝えること(アイメッセージ)である。孤立感がやわらぎ、話を続けられる関係の土台になる。
残る3つは、いずれもAさんのつらさから話をそらしてしまう。励ましは絶望を否定し、「数日で楽になる」は抗うつ薬が効き始めるまで2〜4週かかる事実と違い、「誰にでもある」は苦痛を一般化してしまう——まず聴き、受け止め、安全を守るのが順序である。
希死念慮とは
「死にたい」「消えてしまいたい」と思う気持ち。言葉にされたら話をそらさず、そのまま受け止める。
アイメッセージとは
「あなたは…」ではなく「私は…」を主語にして伝える言い方。相手を責めずに、心配していることが届く。
- 1
「生きていれば良いことがありますよ」不正解
「生きていれば良いことがある」は表面的な励ましで、患者の絶望感を否定してしまう。
- 2
「薬を飲むと数日で効いて楽になります」不正解
抗うつ薬の効果発現には通常2〜4週かかり、「数日で効く」は誤った期待を与える。
- 3
「悲しいことが続くときは誰にでもあります」不正解
「誰にでもある」は患者の苦痛を一般化・矮小化してしまい共感にならない。
- 4
「Aさんがつらい状況にあることを私は心配しています」正解
つらさを受け止め、心配していることをアイメッセージで伝える共感的対応で、信頼関係の基盤となる。
📚 ここも一緒におさえておこう
希死念慮のある患者への基本姿勢はTALKの原則=Tell(心配していることを言葉で伝える)/Ask(自殺について率直に尋ねる)/Listen(絶望的な気持ちを傾聴する)/Keep safe(安全を確保する)。
- 自殺について尋ねることが自殺を促すことはない。はっきり尋ねることが危険度の評価と予防の第一歩
- 抗うつ薬が効き始め意欲が回復してくる時期は、行動力が戻って自殺の危険がむしろ高まる。開始初期も同様に注意する
- 安易な励まし(頑張って・元気を出して)や、重大な決断を勧めることは避ける
- 危険物の管理、単独になる時間の把握、家族との情報共有など具体的な安全確保を並行して行う
参考: 自殺予防・希死念慮のある患者への看護(傾聴・受容)
出典:「第113回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について