第113回 看護師国家試験 午前 問114 解説
📝 問題
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。 Aさん(22歳、男性)は、高校卒業後に就職したが、同僚との関係がうまく築けず、転職を繰り返している。「他の人と自分はどこか違う。自分の将来が不安だ」と感じたAさんは精神科クリニックを受診し、自閉症スペクトラム障害と診断された。Aさんは小学生のころから他人の気持ちが理解できないときがあり、対人関係を築くことが苦手で、学校で孤立していた。また、偏食が強く、るいそうがみられたために、同級生から容姿のことでいじめられたことがあった。中学校や高校では忘れ物が多く、集団生活になじめなかった。 就労移行支援を利用し、Aさんは仕事を始めたが、苦手な仕事内容が多く、失敗が続いているため同僚から注意を受け続けている。外来看護師は、Aさんから「毎日が憂うつでつらい。ストレスが溜まるのでどうしたらよいか」と相談を受けた。 Aさんへの対応で適切なのはどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ Aさんへの対応として適切なのは、憂うつな気分について詳しく話してもらうことである。
「毎日が憂うつでつらい、ストレスが溜まる」という訴えに対しては、まず本人の気持ちを受け止め、憂うつな気分について詳しく語ってもらい、感情の表出を促すことが基本的で適切な対応である。傾聴を通してつらさの背景や具体的なストレス要因を理解でき、その後の援助につなげられる。
精神看護における援助の基本は『受容・傾聴・共感』である。まず語りを引き出し、本人と一緒に対処を考えていく姿勢が求められる。
- 1
仕事に慣れるまで待つように説明する。不正解
仕事に慣れるまで待つよう説明するのは訴えを軽視する対応で、現在のつらさに応えていない。
- 2
憂うつな気分について詳しく話してもらう。正解
憂うつな気分について詳しく話してもらうことは、感情の表出を促し背景を理解する基本的で適切な対応である。
- 3
職場の同僚とうまく付き合う方法を考えてもらう。不正解
対人関係の対処法を本人に考えさせるのは、ASDの特性を踏まえるとこの段階では負担が大きく適切でない。
- 4
外来看護師が行っているストレス発散方法を指導する。不正解
看護師自身のストレス発散方法を一方的に指導するのは、本人の個別性を踏まえない対応である。
📚 国試でよく狙われるところ
精神看護の対応は、してよい声かけと避けたい声かけの線引きが繰り返し問われる。
- 閉じた質問は事実確認に、開かれた質問は感情や体験の表出に向く。訴えを受け止める段階では開かれた質問を用いる。
- 避けたい対応=安易な保証(「大丈夫ですよ」)、助言の押しつけ、話題の転換、批判や評価。
- 強い苦痛を訴える人には希死念慮の有無を率直に確認する。尋ねること自体が自殺を促すことはない。
| 技法 | 内容 |
|---|---|
| 傾聴 | 相手のペースに合わせ、批判せずに聴く |
| 受容 | 相手の感情や体験をありのままに受け止める |
| 共感 | 相手の立場に立って感情を理解し、言葉にして返す |
| 開かれた質問 | 「どのようなときにつらくなりますか」など自由に語れる問い方。感情の表出を促す |
| 反映(反射) | 相手の言葉や感情を映し返す(「つらいと感じているのですね」) |
| 明確化 | 曖昧な訴えを具体的にする(「つらいというのは、どのような感じですか」) |
| 沈黙 | 相手が考えを整理する時間として尊重する |
参考: 精神看護における治療的関係・傾聴の基本
出典:「第113回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について