第112回 看護師国家試験 午後 問72 解説
📝 問題
Aさん(58歳、男性)は外国籍の妻(40歳)と10年前に結婚し、2人で暮らしている。虚血性心疾患と診断され、外来看護師による生活指導を妻と一緒に受けることになった。初回の面談で、Aさんは「10年間で体重が10 kg増えました。妻の母国の習慣で味が濃いおかずや揚げ物とご飯を1日に何度も食べています。最近、2人とも運動をしなくなりました」と話した。 このときの外来看護師のAさんと妻への最初の対応で適切なのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 生活指導の最初の対応としては、Aさんと妻の考えを聞くことから始めるのが最も適切である。
生活習慣の改善指導では、まず本人と家族が現状や改善についてどう考えているかを聞き取り、その認識や生活背景・価値観を理解することから始める。 一方的な指示ではなく、本人の準備性や文化的背景(妻の母国の食習慣)を踏まえた協働的な目標設定につなげるためである。
他の選択肢は「最初の対応」としては不適切。食事を1日3回までにする、毎日1時間のウォーキング、料理教室はいずれも具体的な指示・提案だが、本人の考えや生活実態を聞かないまま提示すると実行可能性が低く、行動変容につながりにくい。特に妻の母国の食文化に配慮せずに一律の指導を行うと、生活に定着しない。
国試の患者教育では、まずアセスメント(考え・生活状況の聴取)から始めるという原則が繰り返し問われる。いきなり具体的な指示を出す選択肢は「最初の対応」としては誤りと判断できる。
準備性とは
本人がその行動を始める心の準備がどこまでできているか。準備ができていない段階で具体的な指示を出しても、実行にはつながらない。
- 1
生活習慣の改善についてAさんと妻に考えを聞く。正解
まず本人と妻の考えを聞くことで、認識や生活背景を理解し協働的な目標設定につなげられる適切な最初の対応である。
- 2
食事は1日3回までにするよう指導する。不正解
回数制限の指示は本人の実態や考えを聞かないままの一方的な指導で、最初の対応としては不適切である。
- 3
毎日1時間のウォーキングを提案する。不正解
毎日1時間の運動提案は準備性を確認しない具体的指示で、実行可能性が低く最初の対応に適さない。
- 4
料理教室に通うことを勧める。不正解
料理教室の勧奨は本人・家族の考えや文化的背景を踏まえておらず、最初の対応としては不適切である。
📚 丸暗記より仕組みで覚えよう
「最初の対応」を問う患者教育の設問は、行動変容ステージのどこにいるかを見極めてから働きかける、という原則で解ける。5つのステージと、それぞれに効く働きかけを対にして覚えよう。 ステージに合わない働きかけは実行されない。
- 外国にルーツをもつ家族への指導では、食文化を否定せず、調理法や量の工夫など実行可能な範囲を一緒に探す。
- 生活習慣病の指導は「教える」より本人が選べる選択肢を示す姿勢が行動変容につながる。
| ステージ | 本人の状態 | 有効な働きかけ |
|---|---|---|
| 前熟考期 | 6か月以内に行動を変える気がない | 情報提供、気づきを促す |
| 熟考期 | 6か月以内に変えようと考えている | 利点と負担の整理、両価性(変えたい気持ちと今のままがよい気持ちの両方)への働きかけ |
| 準備期 | 1か月以内に変える意思がある | 具体的な目標設定と計画づくり |
| 実行期 | 行動を変えて6か月未満 | 継続の支援、周囲のサポート |
| 維持期 | 6か月以上継続している | 逆戻り(再発)の予防 |
参考: 行動変容の支援(患者教育の基本)/虚血性心疾患の生活指導
出典:「第112回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について