第112回 看護師国家試験 午前 問44 解説
📝 問題
ムーア,F.D.が提唱した外科的侵襲を受けた患者の生体反応で正しいのはどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ ムーアの分類では、転換期に循環血液量が増加する。
ムーア(F.D. Moore)は術後の生体反応を4相に分けた。第1相の傷害期(異化期)、第2相の転換期(変換期)、第3相の筋力回復期(同化期)、第4相の脂肪蓄積期である。 転換期は侵襲で高まっていたカテコールアミンなどの神経・内分泌反応が鎮静化し、体内に貯留していた水分が血管内へ戻って利尿がつき、循環血液量が回復・増加していく時期である。
他の選択肢は各相の特徴が誤っている。傷害期は抗利尿ホルモンやアルドステロンの分泌亢進により尿量は減少する(増加ではない)。筋力回復期(同化期)は蛋白合成が進み体力が回復する時期で、蛋白の分解(蛋白異化)が進むのは傷害期である。脂肪蓄積期は体力が回復し活動性が高まる時期で、活動性が低下するわけではない。
蛋白異化とは
体のタンパクを分解してエネルギーに変えること。反対に材料からタンパクをつくり直すのが蛋白同化で、回復とともに異化から同化へ移る。
カテコールアミンとは
アドレナリン・ノルアドレナリン・ドパミンの総称。侵襲やストレスを受けると分泌が増え、血圧や心拍数を上げる。
- 1
傷害期では尿量が増加する。不正解
傷害期は抗利尿ホルモン・アルドステロンの亢進により尿量は減少する。増加ではない。
- 2
転換期では循環血液量が増加する。正解
転換期は貯留水分が血管内に戻って利尿がつき、循環血液量が回復・増加する。
- 3
筋力回復期では蛋白の分解が進む。不正解
蛋白の分解が進むのは傷害期であり、筋力回復期(同化期)は蛋白合成が進む。
- 4
脂肪蓄積期では活動性が低下する。不正解
脂肪蓄積期は体力が回復し活動性が高まる時期で、活動性が低下するわけではない。
📚 一緒に確認しよう
術後の回復は、ムーアの4相にそって体の反応が移り変わる。
- 術後は血管から水分が漏れて間質にたまり、むくみが出て尿が減る。これを第3間隙(サードスペース)への水分貯留という。転換期にこの水分が血管内へ戻る(リフィリング)と尿量が増える
| 相 | 時期の目安 | 主な生体反応 |
|---|---|---|
| 第1相 傷害期(異化期) | 術直後〜2〜4日 | 抗利尿ホルモン・アルドステロン・カテコールアミン・コルチゾールの分泌亢進、尿量減少、ナトリウムと水の貯留・カリウム排泄、発熱・頻脈、腸蠕動の低下、蛋白異化 |
| 第2相 転換期(変換期) | 術後3日ごろから1〜2日間 | 神経内分泌反応の鎮静化、第3間隙に貯留した水分が血管内へ戻り利尿がつく、循環血液量の回復、腸蠕動の再開 |
| 第3相 筋力回復期(同化期) | 術後1週ごろから数週間 | 蛋白同化が進み筋力・体力が回復、創傷治癒が進む、食欲の回復 |
| 第4相 脂肪蓄積期 | 術後数週〜数か月 | 脂肪が蓄積し体重が回復、活動性が高まり社会復帰へ |
参考: Moore, F.D. の術後生体反応(4相)に関する標準的看護学教科書
出典:「第112回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について