第111回 看護師国家試験 午後 問56 解説
📝 問題
高齢者に経口薬の薬効が強く現れる理由はどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 血清アルブミンの減少により薬効が強く現れる。
多くの薬物は血中で血漿蛋白(主にアルブミン)と結合し、結合していない遊離型(フリー)の薬物のみが薬効を発揮する。 高齢者では加齢や低栄養により血清アルブミンが減少するため、蛋白と結合できず遊離型となる薬物の割合が増え、薬効が強く(時に過剰に)現れる。
他の選択肢は薬効が強く現れる主な理由にならない。 骨密度の低下は骨粗鬆症・骨折リスクに関わるが、経口薬の薬効の強さとは直接関係しない。 胃酸分泌の減少は一部の薬物の溶解・吸収に影響しうるが、薬効が強く現れる主因とはならない。 消化管運動の低下は薬物の吸収速度に影響するが、遊離型薬物が増えて作用が強まることを説明する主要因は血清アルブミンの減少である。
覚え方は「アルブミン↓→遊離型薬物↑→効きすぎ」。 加えて肝・腎機能低下で代謝・排泄も遅れ、薬が体内に残って副作用が出やすくなる。
アルブミンとは
血液中で最も多いタンパク。栄養状態の指標になり、薬などを結びつけて運ぶ役目ももつ。
遊離型とは
血液中でタンパクと結びついていない薬のこと。この形になった薬だけが体に効く。
- 1
骨密度の低下不正解
骨密度低下は骨折リスクに関わり、経口薬の薬効の強さとは直接関係しない。
- 2
胃酸分泌の減少不正解
胃酸分泌減少は一部の吸収に影響するが、薬効が強く現れる主因ではない。
- 3
消化管運動の低下不正解
消化管運動低下は吸収速度に影響するが、作用増強の主要因ではない。
- 4
血清アルブミンの減少正解
血清アルブミン減少で遊離型薬物が増え、薬効が強く現れる。
📚 国試でよく狙われるところ
高齢者の薬は、体の変化と、看護としての服薬支援の両方が問われる。目安となる薬剤数と、支援の工夫をセットで覚えよう。 高齢者では6剤以上の多剤併用(ポリファーマシー)で有害事象が増えるとされ、処方の定期的な見直しが重要。服薬支援には一包化・服薬カレンダー・お薬手帳・嚥下しやすい剤形への変更が有効。
- 高齢者で特に慎重な投与を要する薬=ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬(転倒・せん妄)、抗コリン薬(口渇・便秘・尿閉・認知機能低下)、非ステロイド性抗炎症薬〈NSAIDs〉(腎障害・消化性潰瘍)。
- 腎排泄型の薬は腎機能(推算GFR・クレアチニンクリアランス)に応じて減量する。
- 高齢者は自覚症状を訴えにくいことがあるため、ふらつき・食欲低下・傾眠・便秘など非特異的な変化を薬剤の副作用として疑う。
| 過程 | 加齢による変化 | 結果 |
|---|---|---|
| ①吸収 | 胃酸分泌の低下、消化管運動・血流の低下 | 吸収速度は遅くなるが、吸収量は大きくは変わらないことが多い |
| ②分布 | 体脂肪率の増加、体内水分量の減少、血清アルブミンの減少 | 脂溶性薬物が蓄積し、遊離型薬物が増えて作用が強く出る |
| ③代謝 | 肝血流量・肝細胞数の減少 | 初回通過効果が下がり、代謝が遅れて血中濃度が上がる |
| ④排泄 | 腎血流量・糸球体濾過量の低下 | 排泄が遅れ、半減期が延長して薬が蓄積しやすい |
出典:「第111回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について