第108回 看護師国家試験 午前 問91 解説

状況設定成人看護学✔ 監修済み

📝 問題

Aさん(20歳、男性、大学生)は、炎天下で長時間サッカーをしていたところ転倒し、左膝と左側腹部を強打した。「左膝がカクッと折れて力が入らない。左腹部が痛い」ことを主訴に救急外来を受診した。受診時のバイタルサインは、体温37.0℃、呼吸数14/分、脈拍98/分、血圧102/58mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%。血液検査の結果、赤血球550万/μL、Hb16.0g/dL、Ht55%、白血球8,900/μL、CRP0.3mg/dLであった。尿検査は尿潜血(-)、尿比重1.025、濃縮尿であった。胸部・腹部・下肢のエックス線写真に異常なし。胸腹部CTでは脾臓損傷を否定できなかった。このため、左半月板損傷と外傷性脾臓損傷を疑い入院となった。 Aさんの状態をアセスメントするために、救急外来受診時に優先して観察すべき項目はどれか。

✅ 正解

3

💡 解説

✅ 外傷性脾臓損傷では腹腔内出血による循環動態の変化を最も早く反映するため、脈拍数の観察を優先する。

脾臓は血液が豊富に流れる実質臓器で、傷つくと腹腔内に大量の出血を起こしやすい。 出血で循環血液量が減ると、体は心拍数を上げて血圧を保とうとする。 そのため血圧が下がるより前に頻脈が現れ、脈圧も狭くなる。 Aさんは受診時すでに脈拍98/分とやや速く、血圧は保たれているものの出血性ショックへ進む危険がある。 出血の進行を最も早く捉えられるのは、脈拍数の観察である。

検査値の読み方にも注意がいる。 Hb16.0g/dL・Ht55%は一見高いが、これは炎天下の発汗による脱水(濃縮尿・尿比重の上昇)を映した血液濃縮であって、貧血がないという根拠にはならない。

脈圧とは

収縮期血圧と拡張期血圧の差。出血で心臓に戻る血液が減ると血管が縮んで拡張期血圧が上がり、差が小さくなる。

  • 1

    尿の性状不正解

    尿潜血は陰性で、腎・尿路損傷の所見は乏しい。脱水による濃縮尿はあるが、脾損傷の出血把握には脈拍観察が優先される。

  • 2

    腸蠕動音不正解

    腸蠕動音は消化管の機能評価には有用だが、脾損傷による腹腔内出血の進行を早期に反映する指標ではない。

  • 3

    脈拍数正解

    腹腔内出血が進むと血圧が下がる前に頻脈が現れるため、脈拍数は循環動態の悪化を最も早く捉えられる観察項目である。

  • 4

    体温不正解

    体温37.0℃は炎天下の運動後としてほぼ正常範囲で、出血の進行を評価する最優先項目ではない。

📚 国試でよく狙われるところ

ショックは、早期に現れる徴候と、代償が破綻したあとの徴候を入れ替えて問われる。 「血圧が下がるのは最後」と覚えよう。 ショックの5徴候(5P)は蒼白・虚脱・冷汗・脈拍触知不能・呼吸不全で、これらがそろうのは代償が破綻したあとである。

  • 脾臓・肝臓は血流が豊富な実質臓器で、鈍的外傷による腹腔内出血の代表的な原因となる
  • 脱水では血液が濃縮してHb・Htが見かけ上高くなるため、出血直後のHbが正常でも出血を否定できない
出血性ショックの重症度と徴候
区分循環血液量の喪失脈拍血圧意識
Ⅰ15%未満100/分未満正常軽度の不安
Ⅱ15〜30%100〜120/分収縮期は保たれるが脈圧が狭くなる不安・興奮
Ⅲ30〜40%120〜140/分低下する不穏・混乱
Ⅳ40%以上140/分を超え微弱著明に低下傾眠・昏睡

血圧低下は代償の破綻を意味する。頻脈・脈圧狭小化・末梢冷感の方が早い。

参考: 医療情報科学研究所編『病気がみえる』/日本外傷学会・日本救急医学会監修『外傷初期診療ガイドラインJATEC』

出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について

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