第108回 看護師国家試験 午前 問112 解説
📝 問題
Aさん(37歳、女性、会社員)は、1人暮らし。11月に経理部へ異動となった。新しい人間関係と慣れない仕事で帰宅後も緊張が取れず、眠れない日が続いていた。異動から3週目の朝、会社のエレベーターに乗ると、息苦しさ、動悸からパニック発作を起こした。その後も不眠とパニック発作が出現したため、異動から2か月後、精神科クリニックを受診し、パニック障害と診断された。主治医からは、短時間型の睡眠薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉が処方された。また、職場の協力を得て仕事量の調整をしてもらうことになった。受診から5日後、Aさんから「昨日の朝から気分が悪くなり、下痢をするようになった」と電話があった。 受診後のAさんの状況に対する看護師のアセスメントで適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ SSRI開始5日で出現した悪心・下痢は、SSRIの副作用(消化器症状)として最も適切にアセスメントできる。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、飲み始めに消化管のセロトニン受容体が刺激され、悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状を起こしやすい。 多くは服用開始から1〜2週間で軽くなる一過性の副作用である。
Aさんは受診してSSRIを飲み始めた5日後にこの症状が出ており、時期からみてSSRIの副作用(有害事象)と考えるのが最も適切である。
残る3つは、症状の出た時期と結びつかない。 仕事量は調整されており、ストレスの増大だけでは悪心と下痢を説明できない。 うつ症状が悪化しても、悪心と下痢が前面に出ることは少ない。 睡眠薬の持ち越し効果なら、まず翌朝の眠気やふらつきが出る。
- 1
ストレスの増大不正解
仕事量の調整もなされており、消化器症状をストレスの増大だけで説明するより、新規開始のSSRIとの関連が強い。
- 2
うつ症状の悪化不正解
悪心・下痢はうつ症状の悪化に特異的な所見ではなく、この状況の説明として最適ではない。
- 3
睡眠薬の持ち越し効果不正解
短時間型睡眠薬の持ち越し効果は翌朝の眠気・ふらつきが典型で、悪心・下痢という消化器症状は説明しにくい。
- 4
SSRIの副作用〈有害事象〉正解
SSRIは投与初期に悪心・下痢などの消化器症状を起こしやすく、開始5日後の症状はその副作用として説明できる。
📚 ここも一緒におさえておこう
抗うつ薬は、効果が出るまでに2〜4週かかる一方、副作用は飲み始めに出やすい。 この時間差をあらかじめ伝えておくと、自己判断での中断を防げる。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 投与初期(1〜2週) | 悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状。多くは一過性で軽減する |
| 投与初期・増量時 | 賦活症候群(不安、焦燥、不眠、衝動性の亢進)。特に若年者では自殺関連事象に注意 |
| 併用時・過量時 | セロトニン症候群(発熱、発汗、振戦、ミオクローヌス、下痢、意識障害) |
| 長期 | 性機能障害、体重増加、低ナトリウム血症(高齢者で注意) |
| 中止時 | 中断症候群(めまい、感冒様症状、不安)。自己判断で中止せず漸減する |
参考: 日本うつ病学会 治療ガイドライン/医療情報科学研究所編『病気がみえる 精神科』
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について