第108回 看護師国家試験 午前 問110 解説
📝 問題
Aさん(30歳、初産婦、会社員)は、夫と2人暮らし。妊娠38週6日で3,200gの児を正常分娩した。分娩後から母児同室を開始しており、母乳育児を希望している。 産褥3日。Aさんの子宮底は臍下3横指、硬度は硬い。悪露は血性少量であった。乳房は左右とも全体的に硬く触れ、熱感と発赤があり痛みを訴えている。乳汁分泌状態は、乳管口は開口数左右5本ずつ、移行乳の分泌を認める。Aさんのバイタルサインは体温37.9℃、脈拍72/分、血圧108/60mmHgであった。 Aさんの状態として最も考えられるのはどれか。
✅ 正解
3・4
⚖️ 出題時に複数の選択肢が正解と認められた「複数正解(救済)」問題です。いずれか一つを選べば正解とされました。
💡 解説
✅ 本問は複数正解措置がとられた救済問題で、乳腺炎と乳房緊満の両方が公式の正解である。
本問は厚生労働省により複数正解措置(救済問題)がとられ、乳腺炎と乳房緊満の両方が正解として扱われる。
産褥3日で、乳房は左右とも全体的に硬く、熱感・発赤・痛みを伴い、体温は37.9℃である。 乳汁のうっ滞で乳房が過度に張り、熱感・緊張・痛みが出た状態と読めば乳房緊満になる。 発赤・熱感・発熱を炎症の徴候と読めば乳腺炎(うっ滞性乳腺炎)とも解釈できる。 どちらとも取れる所見だったため、両方を正解とする措置がとられた。
残る2つは、所見が合わない。 子宮底は臍下3横指で硬く、悪露も血性少量で、子宮復古は順調である。 産褥熱を疑わせる悪露の異常やそのほかの感染徴候もみられない。
- 1
産褥熱不正解
子宮底は臍下3横指で硬く悪露も血性少量と子宮復古は良好であり、産褥熱(子宮内感染等による発熱)を疑わせる所見はない。
- 2
子宮復古不全不正解
子宮復古は順調で、子宮復古不全を示す子宮底の下降不良や悪露の異常延長はみられず該当しない。
- 3
乳腺炎正解
乳房の発赤・熱感・疼痛と発熱を炎症徴候ととらえれば乳腺炎(うっ滞性乳腺炎)と解釈でき、複数正解措置により正解に含まれる。
- 4
乳房緊満正解
乳汁うっ滞による両側性の乳房の硬結・熱感・緊張・疼痛は乳房緊満として説明でき、複数正解措置により正解に含まれる。
📚 混同しやすいので注意
産褥期は、子宮の戻り方・悪露・発熱・乳房のそれぞれに正常の目安があり、どれが外れているかで異常を見分ける。 乳房のトラブルは、両側か片側か・産褥何日か・熱が何度かを組み合わせて見分ける。本問はその境目にあたる所見だった。
- 子宮復古の目安は、分娩直後が臍下2〜3横指、産褥1日で臍高、以後1日1横指ずつ下降し、産褥10日ごろに腹壁から触れなくなる
- 悪露は赤色(産褥3日ごろまで)→褐色(産褥2週ごろまで)→黄色→白色と変化する
- 産褥熱は、分娩後24時間以降の10日間に、2日以上にわたり38℃以上の発熱が続くもの
| 乳房緊満 | うっ滞性乳腺炎 | 化膿性乳腺炎 | |
|---|---|---|---|
| 時期 | 産褥3〜4日ごろ | 産褥2週ごろまで | 産褥2〜4週に多い |
| 部位 | 両側性で乳房全体 | 片側の一部に限局した硬結が多い | 片側の限局した部位 |
| 症状 | 硬く張り、熱感・緊満感・疼痛 | 硬結・発赤・疼痛、微熱 | 強い発赤・腫脹・拍動痛、38℃以上の発熱と悪寒、腋窩リンパ節腫脹 |
| 対応 | 頻回の授乳・搾乳、授乳前に乳輪を柔らかくする | 頻回の授乳・搾乳、授乳姿勢の工夫 | 抗菌薬、必要なら切開排膿。授乳は原則継続 |
参考: 厚生労働省『第108回看護師国家試験(複数正解の措置)』/日本助産師会 資料
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について