第107回 看護師国家試験 午前 問92 解説
📝 問題
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。Aさん(56歳、男性)は、コンビニエンスストアの店長で自動車を運転して通勤している。不規則な生活が続き、ストレスが溜まることも多く、十分な睡眠がとれないこともあった。荷物を運ぶときに胸部の圧迫感が繰り返し出現し受診したところ、狭心症が疑われたため検査をすることになった。脂質異常症の既往がある。検査の結果、Aさんは労作性狭心症と診断され、硝酸薬、カルシウム拮抗薬および抗血小板薬を内服することになった。その後、外来通院を続け、以前と同様に負荷のかかる作業もできるようになった。内服治療から1か月後、胸部の圧迫感が強くなり、時々左上腕から前腕にかけての放散痛も出現するようになったため、経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けた。カテーテルは右大腿動脈から挿入されていた。手術中から抗凝固療法を実施している。 手術直後の観察項目として適切なのはどれか。2つ選べ。
✅ 正解
3・4
💡 解説
✅ PCI直後は穿刺部・全身の出血の有無と、穿刺側下肢の動脈血流障害を示す両足背動脈の触知が観察の要点である。
経皮的冠動脈形成術(PCI)は大腿動脈などから太いシースを挿入し、術中・術後に抗凝固・抗血小板療法を併用するため、穿刺部からの出血や後腹膜血腫のリスクが高い。 止血のための圧迫や血栓・塞栓により穿刺側下肢の血流が障害されることもあるため、両側の足背動脈の拍動を触知して左右差・消失がないかを確認する。 この2点が術直後の観察の中心となる。
他の選択肢は、術直後に見るべき項目ではない。 乏尿(造影剤腎症)や穿刺部の感染徴候は、術直後よりも時間がたってから問題になる。 皮膚の黄染は肝胆道系の異常を示す所見で、この治療とは結びつかない。
シースとは
血管に差し込んでおく短い管。カテーテルを出し入れする通り道になり、抜いたあとは圧迫して止血する。
- 1
乏尿の有無不正解
乏尿は造影剤腎症などで問題になりうるが、術直後の最優先観察項目ではなく、出血・末梢循環の確認が先である。
- 2
皮膚の黄染不正解
皮膚の黄染(黄疸)は肝胆道系の異常を示すもので、PCI直後の観察項目として関連性が低い。
- 3
出血の有無正解
抗凝固療法下で穿刺部からの出血・血腫のリスクが高く、出血の有無の観察は欠かせない。
- 4
両足背動脈の触知正解
穿刺側下肢の血流障害を早期に発見するため、両足背動脈の触知で左右差・消失を確認することは適切である。
- 5
穿刺部位の感染徴候不正解
穿刺部位の感染徴候は術後数日経過してからの観察項目であり、術直後の優先観察ではない。
📚 国試でよく狙われるところ
経皮的冠動脈形成術は、術後に起こる合併症とその観察・予防が問われる。穿刺部・腎臓・冠動脈と、起こる場所ごとに整理して覚えよう。
- 末梢循環障害の徴候は5P=疼痛(Pain)・蒼白(Pallor)・脈拍消失(Pulselessness)・知覚異常(Paresthesia)・運動麻痺(Paralysis)
- 大腿動脈穿刺では後腹膜血腫が起こると外見上の腫脹が目立たないまま出血性ショックに至るため、腰背部痛・血圧低下・頻脈に注意する
- 造影剤使用後は造影剤腎症の予防に十分な輸液を行い、尿量と血清クレアチニンを確認する
- 橈骨動脈穿刺は大腿動脈穿刺より出血合併症が少なく、早期離床が可能である
- ステント留置後は抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を継続し、自己判断で中断するとステント血栓症の危険があることを説明する
参考: 日本循環器学会「安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン」/医療情報科学研究所編『病気がみえる vol.2 循環器』
出典:「第107回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について