第105回 看護師国家試験 午前 問87 解説
📝 問題
Aさん(35歳、女性、会社員)は、動悸、手指の震え及び体重減少があり、受診したところ、頻脈と眼球突出とを指摘され抗甲状腺薬の内服を開始した。Aさんは看護師に「仕事のストレスは寝る前にビールを飲むことで解消するようにしているが、ちょっとしたことでイライラして眠れない」と話した。Aさんへの説明で適切なのはどれか。2つ選べ。
✅ 正解
4・5
💡 解説
✅ 抗甲状腺薬を始めた人には、発熱したら受診することと、いらいらは病気による症状であることを説明する。
動悸・手指の震え・体重減少に頻脈と眼球突出が加わっており、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状がそろっている。甲状腺ホルモンが多いと代謝と交感神経のはたらきが高まり、体だけでなく気分にも出る。いらいら・落ち着かなさ・不眠は性格の問題ではなく症状であり、そう伝えるだけで本人の負担が軽くなる。
抗甲状腺薬でとくに警戒するのが無顆粒球症である。細菌と戦う好中球が急に減り、発熱や咽頭痛で始まる。飲み始めの2〜3か月に多いので、この時期に熱やのどの痛みが出たら様子をみずに受診するよう、あらかじめ伝えておく。
仕事を休む必要はなく、飲酒も禁止ではない。ホルモンが落ち着くまでは、心臓に負担のかかる激しい運動を控える。
無顆粒球症とは
細菌と戦う白血球(好中球)が急に減った状態。感染に弱くなり、発熱やのどの痛みから始まる。抗甲状腺薬の重い副作用として知られる。
- 1
「仕事を休みましょう」不正解
仕事を休む必要はない。薬で甲状腺ホルモンが落ち着けば症状は和らぐので、働き続けながら疲れをためない工夫を一緒に考える。
- 2
「禁酒する必要があります」不正解
抗甲状腺薬に禁酒の決まりはない。ただし寝る前の飲酒は眠りを浅くするため、量と時間を見直すよう勧める。
- 3
「積極的に運動しましょう」不正解
甲状腺ホルモンが多い時期は心臓に負担がかかっており、激しい運動は避ける。ホルモンが落ち着いてから体を動かす。
- 4
「発熱したときは受診してください」正解
抗甲状腺薬では無顆粒球症が起こることがあり、発熱と咽頭痛が最初のサインになる。自己判断で解熱薬を飲まず、すぐ受診して血液検査を受ける。
- 5
「病気が原因でイライラしやすくなります」正解
いらいら・落ち着かなさ・不眠は、甲状腺ホルモンが多いことによる症状である。本人の性格や我慢が足りないためではないと伝える。
📚 混同しやすいので注意
甲状腺の病気は、機能が高いときと低いときの症状を入れ替えて問われる。「代謝が上がるか下がるか」で全部そろえて覚えよう。
| 項目 | 機能亢進症(バセドウ病) | 機能低下症(橋本病など) |
|---|---|---|
| 体重 | 減る | 増える |
| 脈拍 | 速い | 遅い |
| 体温・汗 | 暑がり、多汗 | 寒がり、皮膚の乾燥 |
| 便通 | 下痢 | 便秘 |
| 気分 | いらいら、落ち着かない | 意欲の低下、眠気 |
| 特徴的な所見 | 眼球突出、びまん性の甲状腺腫 | 粘液水腫、脱毛 |
参考: 成人看護学(内分泌疾患の看護)/日本甲状腺学会「バセドウ病治療ガイドライン」
出典:「第105回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について